The previous night of the world revolution~P.D.~
「…ふぅ」

さて、まずは一つ深呼吸をしよう。

こんなときに大騒ぎして慌てて、冷静さを欠いて、良いことなんて何もないからね。

…じゃあ、改めて。

「どうしたの?何があったの?」

私は、この場にいる四人に尋ねた。

ルルシーとシュノ、ルヴィアと華弦の四人だ。

私の横にはアリューシャもいるけど、アリューシャも訳が分からないようで、頭の上にはてなマークがいっぱい浮かんでいた。

説明をしてあげたいけど、その為にはまず、私が事情を聞かないとね。

…しかし。

「…」

ルルシーは口を真一文字に噤んで、何も言ってくれなかった。

成程。本当に大変なことがあったんだね。

それも、ルレイアが絡んでいるのは言うまでもない。

ルルシーがこうなる理由なんて、ルレイア以外に有り得ない。

更に、シュノも。

「うぅ、ひっく、ひっく…。ルレイア…ふぇ…」

ひたすら、溢れ出る涙を拭うばかりで。

何があったのか、言葉にして答えてはくれなかった。

…ふむ。

「ど、ど、ど…どったんだよ二人共…!?泣くなよシュー公!ルレ公がどうしたんだ!?」

ルルシーとシュノがこんな調子だから。

さすがのアリューシャも、これはただ事ではないと思ったのだろう。

酷く狼狽えて、そして思い出したかのようにライフルを握り締めた。

「誰か撃てば良いのか!?アリューシャアホだし、なんも出来ないけど…。でも狙撃だけは出来るから!誰か撃って解決するなら、アリューシャに言ってくれ!」

…アリューシャ。その気持ちは高く買うけど。

でも多分、アリューシャが誰かを狙撃して、それで解決する問題ではないと思う。

そんなに単純な話なら、ルルシーもシュノも、こんな風にはなってないだろうからね。

あと、アリューシャは何も出来ないことはないよ。謙遜しないで。

…仕方ない。

幹部組が話せないなら…準幹部の二人に聞くしかないね。

「…ルヴィア。華弦。説明してもらえるかな?」

「…それは…。…その…」

私に話を振られて、ルヴィアは困ったような表情になった。

…そうだね、ルヴィアは言いにくいだろう。

すぐ隣で、自分の上司…ルルシーが、これほど不機嫌な顔で沈黙を貫いているのに。

その部下である自分が、ペラペラ喋って良いものか…。そう思ってるんだろう。

…なら。

「…君なら話せるかな?」

華弦の方を向いて、私は尋ねた。

狼狽えるルルシー達とは裏腹に、華弦だけは静かで、落ち着いていた。

「…私で宜しいんですか?」

「如何せん、他は話が出来る状態じゃなくてね」

「…分かりました。あなたの許可を頂けるなら、私の口から話しましょう」

宜しく。

あまり愉快な話じゃないのは明白だが。

「先程…つい1時間ほど前に、ルレイアさんが連れて行かれました」

華弦は、至って冷静にそう言った。

…成程。

さっきシュノも言ってたね。ルレイアが連れて行かれちゃった、って。

ルルシーとシュノが、こんな状態になっている理由が分かったよ。

目の前で家族を連れて行かれたら、誰だってそうなる。
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