The previous night of the world revolution~P.D.~
確かに俺は、世間一般の目から見て、不幸な目に遭ったのかもしれない。

それは自分でも認める。

が、不幸な目に遭ったのは俺だけではない。

『青薔薇連合会』にいれば、よく分かる。

大抵の者は俺と似たりよったり…あるいは、もっと酷い目に遭って、『青薔薇連合会』に流れ着いている。

ルルシーも、ルリシヤも、アイズもアリューシャもシュノさんも、ルーチェスも。

準幹部のルヴィアさんも、華弦だって。

皆、俺に負けず劣らず…ハズレくじを押し付けられたみたいな人生を送ってきた。

不幸なのは俺だけじゃない。だから、俺だけが不幸ヅラするつもりはない。

俺の不幸は俺のもの。俺の不幸を他人に押し付けることはしない。

「でも…だからこそ思った。あんな事件がなければ…君はきっと今でも、帝国騎士団四番隊隊長を続けていたんじゃないかって」

「…それはそうでしょうね」

自分でもそう思う。

あの忌まわしい事件が起きなければ…俺はきっと今でも、ウィスタリアの名を名乗り、帝国騎士団四番隊隊長を務めていたはずだ。

何かが間違わなければ…俺はきっと今でも、表の世界にいられたはずだ。

今となっては、夢物語以外の何物でもないが。

「君は生まれながらの悪人じゃない。君に背負わされた数々の不幸、その運命が、君を捻じ曲げてしまっただけなんだ」

「…」

随分と物々しい言い方だことで。

「なら…君がその不幸を乗り越えられたら、また表の世界に戻ってくることも出来るんじゃないか、って思ったんだ」

…。

…あ?

何がどうなったら、そこまで話が飛躍するんだ?

「ルレイア・ティシェリー卿。君を帝国自警団に誘ったのは、それが理由だよ」

「…意味不明なんですけど?」

「ローゼリア元女王の暗殺未遂事件。本来なら、あの事件の真相を暴くのは帝国自警団の役目だった」

「…」

それはまた、随分と大きく出たな。

確かに、あのとき…俺の冤罪を証明することが出来たのは、帝国自警団だけだっただろう。

帝国自警団なら、帝国騎士団やベルガモット王家のしがらみに囚われず、真実を探れる力があった。

でも、そうはならなかった。

あの頃の帝国自警団は、俺が名前を思い出すことも出来なかったほど、存在感が薄くなっていて。

あの事件について、一言も…口を挟んでくることさえなかった。

無力だった。帝国自警団も…俺も。

でも、今は違う。

「あのとき私達は、役目を果たせなかった。君を助けてあげられなかった。みすみす、一人の無辜のルティス帝国民を…闇の世界に堕としてしまった」

「…」

「その償いがしたい。君は本来、表の世界で生きるべき人間だった。ただほんの少し…人生の選択を誤ってしまっただけで」

…ふーん。

つまり今の俺は、その「ほんの少しの誤り」の成れの果てだと?

「今からでも、正しい道を歩こう。帝国自警団で。…君がかつて行えなかった正義を、今度こそここで行うんだ」

ブロテは俺に手を差し伸べて、力強くそう言った。

わざわざ、『青薔薇連合会』にいる俺を拉致してまで、帝国自警団で保護したのは。

俺に、この誘いをする為だったのだろう。

『青薔薇連合会』をやめて、帝国自警団に入れと。

…いやはや。

実に熱烈なお誘いじゃないか。嬉しくなってしまいますね。
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