The previous night of the world revolution~P.D.~
「確かに君は、たくさんの悪行を働いたかもしれない。だけど、悪人ではない」

「…」

「やり直そう。元貴族でも、元マフィアでも構わない。帝国自警団は、君を歓迎…」

「…一つ言って良いですか?」

熱烈なお誘いを頂いて、大変光栄ですけど。

返事をする前に、どうしても言っておきたいことがある。

「…どうぞ」

今の俺は紳士ですからね。

くそったれな誘いでも、紳士的に受け答えをする。

そんな訳ですから。

「…クソ食らえ」

…以上。

紳士な俺から、紳士なお返事を一言。

これで、俺の気持ちは分かってもらえただろう。

『青薔薇連合会』を裏切って、帝国自警団に入れ、だと?

どれほど寝惚けていたら、そんな発想になるんだ。

俺のことも、『青薔薇連合会』のことも舐めてるとしか思えない。

「…どうしても駄目なの?」

「あなたは頭がおかしいんですか?自分の立場だったらどうなんです。あなたは闇の世界でも生きられるはずだから、帝国自警団を裏切って『青薔薇連合会』に入れと言われたら、そうするんですか」

「…」

黙るのかよ。

でも、今の俺だってそれと同じことだ。

自分の所属する組織を、ホイホイ変えるはずがないだろう。

ましてや、帝国自警団に。

「生憎俺は、帝国と名のつく組織には、二度と世話にならないと決めてるもので」

「…そうか。そうだね…。いきなりこんなことを言われても困るよね」

別に困ってはないですよ。

あなたのことを、心底馬鹿だなと思ってるだけで。

ノータリンにも程があるだろ。

「用事は終わりましたよね?だったら俺を解放してもらえますか」

そのくそったれな誘いをする為に、わざわざ俺を拉致したんだろう?

悪いが、俺は帝国自警団に手を貸すつもりは微塵もない。

俺がルルシーのもとを離れるとでも?

死んだ方がマシだ。

いつまでもこんなところに居たくはない。用事が終わったなら、さっさと帰りたい。

ルルシー達も心配してくれてるだろうし。

…しかし。

「もう少し待って。私は、まだ諦めてないから」

…とのこと。

首を捩じ切ってやりたくなった。

「…一週間粘ろうが、一ヶ月粘ろうが、百年粘っても、俺の気は変わりませんけど」

「分かってる。でも…君ももう少し落ち着いて、考える時間が必要だと思うから」

いや、だから100時間考えたって、俺の気は変わらないって。

まるまる一ヶ月考えたら、俺が気を変えて「よし!帝国自警団に入ろう!」と言い出すとでも思ってるのか。

それとも、俺を帝国自警団に閉じ込めている間に、また別の何かを企んでいるのか。

…いずれにしても。

「…今日はここまでにしよう」

ブロテは、俺を解放する気はないようだった。

今日の話はここまで…ってことは、次もあるってことか?

…しつこい女だ。

しつこい女は嫌いだね。

「部屋から出ることは出来ないけど、それ以外は自由にしてて構わないから。必要なものがあったら、何でも言って」

「…」

脱走…を、考えなくもないが。

帝国自警団が保護令状を握っている限り、逃げ回っても無駄だ。

仕方ない。

今しばらく、この女の我儘に付き合ってやることになりそうだ。
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