The previous night of the world revolution～P.D.～

「…今更そのことを掘り返して、何になる」

どんなに後悔したって、後の祭りだ。

私はあの子が助けを求めていたときに、何もしてやれなかった。気づいてさえやれなかった。

事実はそれだけだ。

「ごめんなさい。あなたを責めているつもりじゃないんです」

「なら、何の為に…」

「やり直しませんか？」

「…何だと？」

やり直すだと？やり直すとは、何を…。

「あなたはルレイア・ティシェリー卿を、心から愛していたんでしょう？」

「…それは…」

…かつては、そうだった。

今も…その気持ちは変わっていない。ルレイアは認めないだろうが。

だが、あの子を愛していると言って良いものか。

肝心なときに、何一つ助けになることが出来なかった私が。

ルレイアをまだ愛しているなどと、言って良いのか？

それはあまりにも厚かましい…。

…それなのに。

「諦めるにはまだ早いと思うんです。一緒に、彼を闇の世界から連れ戻しましょう」

「…お前は何を言っている？」

「誰もが彼を悪人だと言います。同情の余地もない犯罪者だと…。でも、私はルレイア卿の過去を知り、彼が悪人であるとは思えなくなりました」

「…」

そうだな。

生まれつき、ああではなかった。

真っ直ぐな性格で、正義に忠実で…。

でもだからこそ、信じていたその「正義」に裏切られて…あの子は歪んでしまった。

今更その歪みを正すことは出来ない…と思ったが。

「説得してください、一緒に。彼を闇の世界から連れ戻す為に」

「それは…ルレイアに『青薔薇連合会』をやめさせるということか？」

「えぇ、そうです」

ルレイアに、『青薔薇連合会』をやめさせる。

闇の世界から足を洗わせ、私がいる…かつてあの子がいた…「こちら側」に戻らせる。

…そんなことが…。

…そんなことが出来たら、どれほど良いだろう。

「私の言葉は届きませんでした。私の説得では、全く…聞く耳を持ってくれなかったんです」

…そうだろうな。

少しばかり説得した…くらいで、あの子の心の闇は払えない。

「でも、あなたの言葉なら届くと思うんです。実の姉である、あなたの言葉なら」

「…」

「あなたの口から、説得してもらえませんか。あなたと…それから、あなたのもう一人の弟君にも事情を話して、ルレイア卿の説得に協力してもらいたいのです」

私のもう一人の弟。

ルファディオのことか…。あの子は今も、帝国騎士団に所属している。

「私の言葉じゃ届かなくても。家族の言葉なら…きっとルレイア卿の心に届く。彼を諦めないでください。どうか、説得に力を貸して欲しいのです」

そう言って、ブロテは深々と頭を下げた。

ブロテが今日、私をここに呼んだのは…これが理由だったのだ。

ルレイアが『青薔薇連合会』をやめるよう、ルレイアの姉兄が揃って、あの子を説得して欲しいと。