The previous night of the world revolution~P.D.~
ブロテの言う通りに出来たら、どんなにか幸せだろうと思う。

でも、それは叶わない夢物語。

あの子と家族として生きることを、先に諦めたのは私だ。ルレイアじゃない。

手を離したのは、他でもないこの私なのだ。

助けを求めて、必死に伸ばしたあの子の手を…振り払ったのは私。

今更こちらから手を差し伸べて、掴んでくれるはずがない。

私の言葉など、あの子に届くはずがない。

ルレイアが救いを求めて伸ばした手を、私が振り払ったその手を。

代わりに掴んだのは、あの子の今のパートナー…ルルシー・エンタルーシアだ。

だから、彼の言葉しか届かない。

ルレイアの耳に届くのは、彼の言葉だけだ。

ルレイアが本当に辛くて苦しいときに、救いを与えてくれた救世主。

私ではない。

「…何故ですか?諦めるのですか?」

「…諦めるも何もない」

そもそも、最初から話にならない。

「ルファディオは、元々ルレイアのことを好いてはいなかった。説得には協力しないはずだ」

「…でも、あなたはルレイア卿と仲が良かったのでしょう?それなら、あなただけでも…」

私だけでも…か。

私一人が説得して、その言葉がルレイアに届くでも?

あの子の闇は、そんなに浅いものではない。

もっと濃くて深くて、底が知れない。

一条の光も差さない場所に、あの子はいるのだ。

そこに、私の手は届かない。

どれほど手を伸ばしても、ルレイアの深い闇の底に辿り着くことはない。

ただ一人、ルルシー・エンタルーシアを除いては。

「ルレイア卿の姉として…あなたには出来ることがあるはずです。道を踏み外した彼を、正しい方向に連れ戻すと…」

「果たして、それは本当に正しいことだと思うか?」

「…え?」

間違ったから、正しい方に直させる。

しかしそれは、本当に「正しい」行為なのか?

今の私は、そんなことを考えてしまう。

以前の私だったら…きっと受け入れられなかったに違いない。

正しさに、いくつもの形があることを。
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