The previous night of the world revolution~P.D.~
「あの子が今、もし助けを求めているのなら。暗闇の孤独から抜け出したくて、自分から表の世界に戻ってきたいと望んでいるのなら…私はいくらでも力を貸す」

かつて出来なかったことを、今度こそあの子にしてあげるのだ。

暗闇でもがいているあの子に、道標を与えてやりたい。

それが出来たら、私の中に巣食うこの罪悪感も…少しは和らぐのだろう。

でも、そんな甘えは許されない。

「あの子は今、救いを求めているのか?闇の世界から脱したいと望んでいるのか?そうではないだろう」

「…」

ブロテは口を噤んで、黙り込んだ。

…やはりな。

ブロテが一方的に、自分の正しさを押し付けているに過ぎない。

ルレイアが自身が『青薔薇連合会』から足を洗いたいと言っている訳ではない。

あの子は依然として、闇の世界に腰を落ち着けることを望んでいるのだ。

…闇に慣れ過ぎたルレイアにとって、光の世界は眩し過ぎて…目を開けてさえいられないのだろう。

闇の中こそ、あの子が安らぎを感じる場所なのだ。

そうなってしまった。

私が助けてあげられなかったばかりに。

生きてさえいれば、いくらでも、何度でもやり直せる…そんな詭弁が、世の中にまかり通っている。

確かにそうなのかもしれない。生きていれば、いつかもう一度チャンスが訪れるのかもしれない。

でも、やはりどうしようも出来ないことは存在する。

どんなにやり直したくても、やり直せないことはある。

死んでしまった人を、生き返らせることが出来ないように。

死んでしまったルレイアの心を、この私が説得したくらいで…蘇らせることなど出来ないのだ。

「闇の世界に。『青薔薇連合会』にいることが、今のあの子の幸せなんだ」

ルレイアが助けを求めているとき、何もしてやれなかった私に。

今、あの子の為にしてやれることは何か。

それは、表の世界に生きる私達の「正しさ」を押し付けることではない。

そちらは間違った道だから戻ってこい、と強引に腕を引っ張ることではない。

闇の世界で安らぐあの子の幸せを、認めてやることだ。

光の中で生きられなかったあの子の弱さを、受け入れてやることだ。

そして、地べたを這いずりながらも…それでも暗闇の中で生きていくあの子の選択を、尊重することだ。

それがルレイアの幸せなら、私が口を挟んで良いはずがない。

例え間違った道なのだとしても。

そこにはルレイアの居場所があり、仲間がいて、新しい家族がいる。

あの子は一人ではない。私がいなくても、立派に生きていける。

闇の世界でも良い。あの子がもう二度と、苦しまずに生きられるのなら。

私が望むのはそれだけだ。

既に一生分の不幸を経験したルレイアが、今度こそ幸福に生きられるのであれば。

そこが闇だろうと光だろうと、大した問題ではない…。

それが、あの子がいなくなってからというもの、ずっと考えていた…。

私なりに出した結論だ。

ルレイアの決意が揺らがないように、私の決意もまた揺らがない。

戻ってきて欲しいとは思う。でも、その気持ちを押し付けはしない。

ルレイアが望むことを、望むようにすれば良い。

私は、それを応援する。

それが今、あの子の姉として私がルレイアにしてあげられる唯一の救いだ。
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