The previous night of the world revolution~P.D.~
「うぉぇぇぇぇ、死ぬぅぅぅぅ!甘い!あまぁぁぁぁ!」

床に転がって、ごろごろと悶絶するアリューシャ。

…この馬鹿は。

いっそ、そのままくたばってしまえ。

三日くらい帰ってこなくて良い。

「よしよし、アリューシャ。あっちでうがいしようか」

アリューシャの保護者であるアイズが、アリューシャを介抱していた。

「ジゴクザラメで助かったな。この砂糖は、唯一普通に口にしても身体に害のない材料だ」

と、ルリシヤ。

…害がない?何処が?

アリューシャの奴、死にかけてるように見えるんだが…。

「他の三つは、そんなにヤバいんですか?」

ルーチェスが尋ねた。

「あぁ、ヤバい。ジゴクトウガラシは見ただけで目が潰れるし、ジゴクゴーヤは口に入れると一生味覚を失う」

…やべぇ。

それはもう、食べ物ではなく凶器だ。

そんなもの販売しちゃ駄目だろ。何考えてるんだシェルドニア人。

「レモンはどうなるんですか?シェルドニアジゴクレモン」

「レモンは、口にしようものなら唾液が止まらなくなる」

「わー。怖い」

一生関わり合いになりたくない食材だ。

…いや、そんなことはどうでも良い。

ルリシヤの新作カラーボールの材料なんて、今の俺にとって…。

「しかし、そんなヤバい食材を、シェルドニアではどうやって使ってるの?」

アリューシャにうがいをさせたアイズが戻ってきて、ルリシヤにそう聞いた。

「当然そのまま食べることは出来ないから、エキスだけを抽出したり、粉末にしてサプリメントにするらしい」

成程。

それなら、一応使えなくもない…。

「あとは、死ぬほど水を入れて薄めてから、料理の材料として使うそうだ」

「へぇ」

そんなことするくらいなら、もういっそ普通の砂糖と、普通のトウガラシと、普通のゴーヤと、普通のレモンを使えよ。

何でわざわざ地獄にこだわるのだ。

…あぁ、下らない。

今の俺は、それどころではないというのに。

「ふぇぇぇ…。死ぬかと思ったぁぁぁ…」

「お帰り。無事で良かった、アリューシャ先輩」

「無事じゃねーよ!口の中がなぁ、ぐにょぐにょきゅ〜っ!ってなったんだからな!」

何だその効果音は。

何も伝わってこない。

それと、不用意に口にしたお前の責任だ。馬鹿め。

「…お前ら、いい加減にしろよ」

堪忍袋の緒が切れた俺は、アホ共に向かってそう言った。

さっきから聞いていれば、下らない話ばかり。

今それどころじゃないって分からないのか。

「どうしたんですか?ルルシーさん」

ルーチェスは、あっけらかんとして聞いてきた。

どうした、じゃねぇ。

「お前は自分の師匠が連れ去られてるのに、少しも心配じゃないって言うのか?」

お前、それでも本当に弟子か?

するとルーチェスは、相変わらずあっけらかんとして。

「えぇ、心配してないです。この程度でどうにかなるルレイア師匠じゃないですから」

「…」

…潔いな、お前は。

俺もそんな風に思えたら、どんなに良かったか。
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