The previous night of the world revolution~P.D.~
怪しい兵器というのがどういうものなのかについては、全く報告があがっていない。

ただ「怪しい兵器があるかもしれない」と聞かされただけだ。

その正体が何なのかは勿論、本当にそんな兵器が存在するのかも分からない。

少なくとも『霧塵会』の連中は、「怪しい兵器なんてとんでもない」と否定してきた。

しかし、誰も実物を見た訳ではないのだ。

見てみないことには、存在するのかしないのかも分からない。

そこで、俺とルリシヤが派遣されることになった。

本来なら、このような仕事は幹部ではなく、一般構成員の仕事だ。

それなのに、俺達幹部が…しかも、二人も派遣されているのは。

ひとえに。

「怪しい兵器か…。…『光の灯台』を思い出して、気分が悪いな」

「そうだな。まさか『霧塵会』が『光の灯台』に辿り着けるとは思えないが…」

でも、もしものことがあるだろう?

ついこの間までルティス帝国では、サシャ・バールレンの監督のもと、『帝国の光』が『光の灯台』の研究をしていた。

『帝国の光』の研究室にあった『光の灯台』もどきは勿論。

関連する研究資料は、全てあの場で塵にした。

そんなことがあったのだ。

「怪しい兵器が…」と言われたら、どうしても『光の灯台』を思い出してしまうだろう?

何かがまかり間違って、『光の灯台』の研究が『霧塵会』に漏れていた…という可能性は、ゼロではない。

可能性がゼロではないなら、警戒するに越したことはない。

そこで、『光の灯台』に詳しいルリシヤと、ついでに俺も派遣された訳だ。

本来なら、ルリシヤと同じく『光の灯台』の研究に携わったルレイアの方が適役なのかもしれないが…。

あいつは、しばらく休んでいてもらわないと困る。

偵察任務くらい、代わりに俺が行く。

「怪しい兵器があるかもしれない」という未確定情報があるだけで、本当に存在すると断定出来ている訳じゃないしな。

まだ、ただの噂である可能性も残っていることだし…。

俺としては、それほど事態を重く見てはいなかったのだが…。

「…ふむ」

ルリシヤは、仮面の上からでも分かるこの思案顔である。

…どうしたんだ。

お前が難しい顔をしていると、何だか不安になるのだが?
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