The previous night of the world revolution~P.D.~
「ようこそいらっしゃいました。ルルシー様、ルリシヤ様」

『霧塵会』の本部に辿り着くと、『霧塵会』のリーダーが出迎えに出ていた。

アシュトーリアさんより、遥かに年上のリーダーだ。

良い歳したおっさんが、気持ち悪い猫撫で声で俺達を迎えてくれた。

ルレイアだったら舌打ちしてるところだな。

この胡散臭い笑顔の下で、何を考えているやら。

少なくとも、強引に家宅捜索に来た俺達二人のことを、歓迎しているとは思えない。

それでも笑顔を見せているのは、俺とルリシヤが『青薔薇連合会』の幹部であり。

決して、逆らってはいけない相手だと分かっているからだろう。

だからご機嫌を取ろうと?

「ようこそ」なんて言いながら、歓迎の気持ちなんかこれっぽっちもないことは、俺もルリシヤも分かっている。

「どうぞ、お入りください」

本当は門前払いしたいに決まっているのに、『霧塵会』のリーダーは笑顔で俺達を迎え入れた。

早速罠が仕掛けられているのではないかと、俺もルリシヤも警戒しながら中に入った。

が、入った途端狙撃を受けるとか、爆発物を投げられるとか、そういうことはなかった。さすがにな。

至って静かだ。

…不気味なくらいに。

「暑い中、ご苦労様です。何か冷たいものでも…」

相変わらずの猫撫で声で、『霧塵会』のリーダーがそう言ったが。

「挨拶は良い。悪いが、早速調べさせてもらうぞ」

俺は、リーダーの偽りの歓迎を遮った。

お互い腹の探り合いをする仲だ。

仲良くお茶なんてする気分じゃないだろう。

俺達も、あんたもな。

大体こいつらにお茶なんか出されても、異物の混入が恐ろしくて、口に出来るはずがない。

さっさと視察任務を始めさせてくれ。

「は…。そうですか、分かりました」

リーダーは一瞬不快そうな顔をしたが、すぐにまた笑顔を取り繕った。

おいおい。本音が見え隠れしてるぞ。

笑顔の仮面をつけると決めたんなら、最後まで頑張れよ。

「一応お前にも聞いておくが、『霧塵会』が俺達に黙って、新型兵器を開発、所有しているというのは本当なのか?」

問い掛けたところで、馬鹿正直に「はい本当です」と答えるはずもないが。

どんな反応をするか確かめる為にも、一応は聞いておくべきだろう。

すると、案の定『霧塵会』のリーダーは。

「まさか!とんでもないことです」

大袈裟に目を見開いて、驚きましたとばかりにそう言った。

あまりにわざとらしい演技で、逆に怪しい。

「あなた方に隠し事などしません。ましてや、新型兵器の開発など…」

「…ふん、そうか」

まぁ、お前の言い分はよく分かった。

それが本当なのか演技なのかどうかは、俺達が自分の目で確かめるしかなさそうだな。

「好きに見て回るぞ。良いな?」

「勿論です、どうぞ」

リーダーに断ってから。

俺とルリシヤは、『霧塵会』本部の家宅捜索を始めた。
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