The previous night of the world revolution~P.D.~
家宅捜索…と言っても。

俺達のそれは、帝国自警団が行ったような優しいものではない。

疑いをかけられた下部組織を相手に、礼儀を尽くす必要はない。

俺もルリシヤも、全ての部屋にずけずけと侵入し。

引き出しを開けて中身を盗み見したし。

鍵が掛かっていても、無理矢理壊した。

金庫があれば、目の前でロックを解除させて中を確認した。

そこまでするか、と思うだろう?

そこまでする。当然だ。

『霧塵会』が隠しているのが本当に『光の灯台』なのか、それに類する新兵器なのか…。

それとも、リーダーが主張するように、そんな兵器など存在しないのか…。

それを確かめる為なら、遠慮も礼儀も必要ない。

引き出しの中身のみならず、本棚の裏やベッドの下まで徹底的に探した。

怪しいものが隠されていないものかと。

ルリシヤも同じようにして、二人で徹底的に捜索した。

『霧塵会』のリーダーは、そんな俺達をにこにこしながら見つめていた。

俺が鍵付きの引き出しをぶっ壊して、中身を検めても。

恐らくリーダーの所有物なのであろう黒光りする高級車を、土足で踏み荒らそうが。

何を見ても、この中年男はにこにこと見つめているだけだった。

むしろ不気味だな。

それとも、俺達が何処を見ようが、何処を探そうが、何も見つけられないとたかを括っているのか?

その可能性はあるな。

今回の視察任務は、事前に通告してから行ったものだ。

おまけに、本当は昨日行う予定だったのに…。

直前になって、ルレイアが戻ってきたという連絡を受け、視察をすっぽかした。

その後は、そもそも視察任務があったことさえ頭の中から消えていたし…。

それだけルレイアが帰ってきたことが、俺にとって重要事項だったんだが…。

『霧塵会』にしてみれば、突然の視察延期は、むしろ喜ばしいことだっただろう。

隠し事を隠す時間の余裕が生まれた訳だからな。

そういう意味では、昨日の視察任務をすっぽかすべきではなかった…のだが。

…仕方ないだろ。

優先順位ってものがあるんだよ。優先順位ってものが。

アイズから連絡が来て、俺は何も考えずにすぐさま『青薔薇連合会』に戻った。

視察任務をどうしよう、とか考える暇もなかった。

我ながらアホだなと思うけど、自分ではどうしようも出来ない。

…そして。

二時間ほどかけて、徹底的に『霧塵会』の本部を捜索した結果。

「…何もなかったな…」

「あぁ、何もなかったな」

俺達が探していたような「お宝」は、見事に何も見つけられなかった。

…何だか拍子抜けだな。

いや…何も出てこないのは、それはそれで良いことなのだが…。

多分、何か隠しているだろうと思っていたから…。
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