The previous night of the world revolution~P.D.~
「当然です。あなた方に隠し事などありませんよ」

二時間かけて成果ゼロの俺達を見て、『霧塵会』のリーダーは苦笑気味にそう言った。

が、その目は勝ち誇った表情を浮かべていた。

…隠しきった、守りきってやった、みたいな目しやがって。

実際そうなんだろうな。

どんな隠し事だって、隠しきれるのなら、それは何も隠していないのと同じことだ。

畜生…。馬鹿にされているようでムカつくな。

何も見つけられなかった俺が悪いのだが。

「嘘を付くな、お前。何処に隠したんだ?」

「とんでもない。言い掛かりですよ。何も隠してなどいません」

「…いけしゃあしゃあと…」

よく言いやがる。

新兵器のことを抜きにしても、『青薔薇連合会』に知られたくない情報の一つや二つあるだろう。

誰しも子供なら、親に知られたくない秘密がいくつかあるもんだ。それと同じ。

隠したいことはあるはずなのに、ここまで何も見つけられないとは…。

まるで…見ても良い部分だけを見せられているような…。

怪しい…怪しさ満点だ。

でも、これ以上探して何かが出てくるとは…。

…仕方ない。

「…ルリシヤ。とにかく今日のところは、引き下がるしかなさそうだな」

「…ふむ…」

探し足りないところは、また日を改めて確かめに来るしかない。

今度は事前に通告せず、抜き打ちで視察に来よう。

やはり事前通告したのが良くなかった。隠す暇を与えてしまった…。

いや、でも…やっぱり隠し事なんて何もない可能性だって、否定しきれないし…。

…難しい。

俺の判断ではどうにも出来ない。

とにかく、この結果をアシュトーリアさんに報告してから、それからどうするか指示をあお、

「…むっ」

「ん?」

『霧塵会』本部廊下を歩いていたルリシヤが、いきなりピタッ、と足を止めた。

びっくりした。どうした?

後をついてきていたリーダーも、怪訝そうな表情。

「ルリシヤ?」

「感じる…」

は?

「この部屋から何かを感じる」

そう言って、ルリシヤはその広い部屋を指差した。

この部屋、って…。

「食堂だろ?ただの…」

恐らく、『霧塵会』の構成員であれば誰でも利用可能なのだろう。

何処からどう見ても、ただの食堂。

「ルルシー先輩、ここを調べたか?」

「え?いや…」

だって、まさか食堂に隠しものはしないだろう?

俺が重点的に探したのは、本棚やデスクの引き出し、それから金庫と…。

それに、武器庫を中心に探した。

本を隠すには図書館が一番だって言うし、武器を隠すなら武器庫が一番かと思って。

まぁ、中身は『青薔薇連合会』の武器庫にあるものと大して変わらなくて、気になるようなものは何もなかったけど…。

「ふむ、それなら今調べよう。良いな?」

良いな?とリーダーに尋ねながら、ルリシヤはズカズカと食堂に入っていった。

お、おい。本気でこんなところ探すのか?

「まさか…。何もありませんよ、ここはただの食堂です」

リーダーも、困惑顔でそう言った。

心なしかその表情に、焦りの色が見えたような気がした。
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