The previous night of the world revolution~P.D.~
そんなことより、捜し物を続けよう。

食堂に入ってから、明らかにリーダーの顔色が変わった。

つまり、何か見られて困るものがあるってことだ。

食器棚の中や、シンクの下まで確かめてみた。

それらしいものは…何も見つからないが。

「いえ、本当に何もありませんから。ましてやこんなところに物を置くなんて…」

『霧塵会』のリーダーは、明らかに焦っていた。

何か隠してますよ、と言わんばかり。

ますます怪しい。

更に。

「冷蔵庫を失礼するぞ」

ルリシヤがそう言って、業務用の大きな冷蔵庫の扉に手をかけると。

「そ…!そんなところに物を隠すはずがないでしょう」

そこを探るのはやめてくれ、と言わんばかりに。

コック帽を被った料理人が、開けさせまいと冷蔵庫の扉を押さえた。

ちらりとリーダーを見ると、こちらも能面みたいになっていた。

…成程。

冷蔵庫に物を隠すとは、なかなかユニークなことを考えるもんだ。

まぁ、普通冷蔵庫を開けて中を探ろう、とはあまり考えないもんな。

なかなか機転の効いた隠し場所…と言えなくもないのだろうが。

どれほど機転を効かせようとも、ルリシヤの仮面の勘を前にしては、どのような機転も徒労でしかない。

残念だな。相手が悪かった。

俺だったら騙せたと思うぞ。

「隠すはずがないのなら、問題なく見せられるはずでは?」

「し、しかし…その、まさか『青薔薇連合会』の幹部様に、冷蔵庫漁りをさせる訳にはいきませんから」

余計な気遣いだな。

これまで散々、引き出しの中身も金庫の中まで漁ったのに。

今更冷蔵庫漁りくらいで、何を躊躇するのか。

「大丈夫だ。俺は気にしない」

ルリシヤはそう一喝した。

俺も同感だ。

しかし、調理人は焦った顔で食い下がってくる。

「そ、それでも…その、一応食材が入っている場所なので…。あまり勝手に漁られると…」

困るってか?

金庫の中まで探ったのに、今更「勝手に漁られると困る」とは。

実に苦しい言い訳だな。

もう間違いない。

ここまで焦った顔で食い下がるってことは、冷蔵庫に何か隠しているのは確実だ。

であれば…。

「ルリシヤ、開けてみよう」

「あぁ、そうだな」

悪いが、お前らの言うことは聞いてやらんぞ。

調理人の制止を無視して、ルリシヤは改めて冷蔵庫の扉を引っ掴み。

勢いよく、パカッと御開帳。

ひんやりとした冷気と共に、冷蔵庫の中身が明らかになった。

…しかし、あれだな。

任務の為とはいえ、他人の家の冷蔵庫を漁るのは…あまり楽しいことではない。

別に疚しいことは何もしないから、気にしないようにしよう。

それより、今は探しものだ。

俺は目を皿のようにして、冷蔵庫の中を探した。
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