The previous night of the world revolution~P.D.~
…の、だが。

「…何もない…?」

リーダーや調理人の焦りまくった態度から、冷蔵庫の中に何か隠してるのは確実…と思ったのに。

一見しただけでは、怪しいと思うようなものは何もなかった。

…あれ…?

何だか…拍子抜けだ。

「え、えぇ…。何もありませんよ。言ったでしょう?」

相変わらず焦った顔で。

しかし、俺達を納得させようと、努めて明るい顔で調理人が言った。

「冷蔵庫の中に、何を隠すんですか?食べるものしか入れてませんよ…。冷蔵庫なんだから」

「…」

そりゃ…冷蔵庫は食べ物を入れる場所だが…。

でも…本当に何もないはずがない。

でなきゃ、冷蔵庫に手をかけた途端、突然態度が変わった理由が分からない。

「ルリシヤ…」

傍らのルリシヤに声をかけてみると。

「ふむ…。…割とスカスカだな」

ルリシヤは冷蔵庫の中をじっと見つめながら、そう言った。

…言われてみれば、そうだな。

三日間買い物に行ってない俺の冷蔵庫の中みたいだ。

折角巨大な冷蔵庫なのに、中身は少なめ。

と言うか…ほとんど入っていない。

大丈夫なのか?これで『霧塵会』全員の口を養えるのか?

しかも、僅かに入っている食材も…バターとかマヨネーズとかお酢の瓶とか、野菜の切れっ端くらいで。

これで本当に料理出来るのか?

まるで、パフォーマンスの為だけに入っているかのような…。

「い、良いでしょう?別に…。食材が届くのが遅れてるだけです」

調理人は目をぐるぐるさせながら、そう言い訳した。

…遅れてる、だと…?

また苦しい言い訳を…。

「ほら、怪しいものは何もなかったでしよう?そろそろ…」

これ以上探られたくないとばかりに、調理人は冷蔵庫の扉に手をかけ。

強引に閉めよう…とした、そのとき。

ルリシヤの仮面が、キラッと輝いた。

「ちょっと待て。まだ用がある」

「え?」

「この冷蔵庫…もっと奥行きが深いよな?」

ルリシヤがそう聞くと、調理人の身体が固まった。

…言われてみれば。

業務用の大きな冷蔵庫で、奥行きもかなり深そう…なのに。

開けてみると、見た目ほど奥行きはない。

…これって…。

「ちょっと失礼」

「あっ…!」

調理人が止めたが、しかしもう遅かった。

ルリシヤは冷蔵庫の奥に手を伸ばし、奥の壁に手を触れた。

すると、まるで蓋をしていたかのようにパカッ、と奥の壁が外れた。

その奥から、そこそこの大きさの暗いスペースが現れた。

…すご…。

そこには、小さな箱や書類の束、封筒の束などがうず高く置いてあった。

これは…ビンゴだな?

「ふむ…。どうやら、俺の仮面の勘が当たったようだな」

ドヤァ、と得意げなルリシヤである。

ドヤ顔はムカつくけど。

でも、毎度のことながら、お前の仮面の勘には感謝してるよ。

今日も百発百中だったな。さすがである。
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