The previous night of the world revolution~P.D.~
さてと。

「…どう言い訳する?あれは何だ?」

俺は調理人と『霧塵会』のリーダーに向かって、そう尋ねた。

あれが何の書類なのかは知らないが。

こんな下らない小細工を施してまで、俺達の目から隠したかったんだろう?

つまりは、何かしら後ろめたいことがあるんだ。

でなきゃ隠しはしないだろうから。

ましてや、冷蔵庫の奥なんて。

よくもこんなスペースを作らせたものだ。

考えた奴は、なかなか機転が効いてるな。

その頭の冴えを、どうして別のことに活かせなかったのかと悲しくなる。

「…」

「…」

調理人は顔を真っ青にして無言。

リーダーの方も無言だったが、こちらはむっつりと不機嫌ヅラだった。

悪は暴かれた、ってことだな。

恨むなら、ルリシヤの仮面の勘とやらを恨んでくれ。

「あれが何かなど、確かめてみれば分かる話だ」

と、ルリシヤ。

「…そうだな」

ルリシヤの言う通りだ。

本当にあれが、怪しい新兵器?とやらの関連資料なのか。

それともまた別の、『青薔薇連合会』に黙っておきたい秘密事項なのかは知らないが。

わざわざこんな方法を使ってまで隠すってことは、それなりの中身なのだろう。

是非とも見せてもらいたいものだ。

ゆっくりと検分して、それからどのような処遇を行うか決定しよう。

…しかし。

「…こうなっては仕方ない」

ずっと不機嫌顔で黙っていた『霧塵会』リーダーが、重々しく口を開いた。

さっきまでの猫撫で声は何処へやら。

ついに本性を現したな。
 
秘密を暴かれて豹変するくらいなら、最初から猫を被るな。

「何が仕方ないんだ?」

リーダーが滲ませる殺気に全く怯むことなく、ルリシヤが尋ねた。

「…『それ』を、お前達の手に渡す訳にはいかない」

「ほう、そうか」

じゃあ、俺達も同じだな。

「それ」とやらを、お前達の手に委ねておく訳にはいかない。

一体何を隠しているのか、確認させてもらわなければな。

…しかし。

冷蔵庫の奥に手を伸ばそうとしたルリシヤの、こめかみに。

ガチャ、と音がして…リーダーの銃口が向けられた。

「…」

相変わらず、ルリシヤは慌てることなく平然としている。

何なら…俺も全く慌てていなかった。

更に、敵はリーダーだけではない。

いつの間にか、食事をしていたはずの『霧塵会』構成員達が。

箸やフォークを置いて、代わりに拳銃を手にして俺とルリシヤを取り囲んでいた。

…成程。

元々食事をしていたのはパフォーマンスで、本当は…こうして、有事の際の戦力にする為だったのか。

焦りまくっていた料理人も、いつの間にか武器を手にしていた。

おいおい。

料理人が持つに相応しいのは、そんな物騒な武器ではなく、包丁とフライパンなのでは?

…完全に取り囲まれてしまったな。

さて、どうするか…。

「…」

「…」

俺とルリシヤは、互いに無言で見つめ合った。

「大人しくしてもらおう。抵抗しないのなら、命は保証してやる」

と、リーダー様から有り難いお言葉を頂いた。

だってさ。どうする?ルリシヤ。
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