The previous night of the world revolution~P.D.~
言うまでもないことだが。

同業者で、素人ではないとはいえ…。

たかが『霧塵会』の構成員に囲まれたところで、俺もルリシヤも、ちっとも恐ろしくはない。

こめかみに銃口を当てられても、全く狼狽えていないルリシヤを見ろ。

むしろ、「面倒臭いことになったな」とか思ってそう。

すると案の定ルリシヤは、この状況に際して一言。

「…面倒なことになったな」

ほらな。

そんなことだろうと思った、ルリシヤは。

こういうところ、ルレイアに似てるよな。

「ふむ。どうする?ルルシー先輩」

「俺が決めるのか?」

「一応、ルルシー先輩の意見も仰いでおこうと思ってな」

あ、そう…。

と言っても、別に考えることは何もないだろう。

こんな奴ら、怖くも何ともない。

さっさとこいつらを蹴散らして、冷蔵庫の奥に隠した資料を持って退散。

『霧塵会』が何を隠しているのか、後でじっくり確かめさせてもらう。

これで良いのでは?

こいつらに付き合ってやる義理はないだろう。

俺はそう思っていた。

しかし。

「ふむ、ルルシー先輩が何を考えているのか、大体想像はつくが…」

「あ?」

「ここは、俺の意見に賛成してもらえないだろうか。ルルシー先輩」

と、ルリシヤは言った。

…ルリシヤの意見…?

「何言ってるんだ?ルリシヤ…」

俺が尋ね返すと、ルリシヤは俺の問いに答える代わりに。

降参したという風に両手を上げた。

えっ…。

「降参だ、降参。投降するから、捕虜として人道的な扱いをすることを希望する」

「おまっ…!何言って…」

俺とお前がいれば、こんな有象無象の雑兵に何人囲まれたところで…。

…それなのに。

「…」

ルリシヤは、こっそり俺に目配せをしてきた。

何と言いたいのかは分かる。

合わせてくれ、と言いたいんだろう?

それは…分かるけど…。

…。

しばし考えて、俺も同じように両手を上げた。

一時的とはいえ、こんな奴らに膝を屈するのは屈辱だ。

しかし、ルリシヤには考えがある。

恐らく俺より遥かに賢いルリシヤが、何か考えを持って動いているのだ。

ルリシヤの考えを、俺が台無しにしてしまいたくはなかった。

今のところは…ひとまず、引こう。

『霧塵会』に膝を屈して、大人しくしよう。

大人しくしてれば命は保証する、と言われたしな。

まぁ、敵の言うことだからな。

本当に命を保証してもらえるのかは分からないが。

いざとなっても、『霧塵会』の雑兵達ごときにどうにかされる俺達ではない。

何せ俺達には、異国のシェルドニア王国に囚われても、華麗に脱出した実績があるからな。

まぁ、ほぼ100%ルリシヤの実績で、俺の功績は微々たるものだが…。

「…よし、連れてこい」

リーダーが部下に指示して、俺達を捕らえさせた。

こうして俺とルリシヤは、一時『霧塵会』の捕虜に身をやつすことになった。

『霧塵会』は『青薔薇連合会』の下部組織なのに。

回り回って自分達の部下に囚われるとは…。
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