The previous night of the world revolution~P.D.~
――――――…その頃、『霧塵会』本部では。

地下の座敷牢のようなところに、俺とルリシヤは揃って押し込められていた。

当然ながら、手首には手錠が嵌められている。

ボディチェックを受け、武器やスマートフォンなんかも全部没収された。

今の俺は丸腰である。

しかし、ルリシヤは素直に丸腰になっているかどうかは怪しい。

仮面もつけっぱなしだしな…。外さないのかよ、それ…。

ただの飾りだと思われて、放っておかれてるのかも。

ルリシヤから仮面を奪えば、多少なりとも戦力の低下になると思うんだがな。

少なくともあの仮面がなければ、仮面の勘とやらは働かないだろうし。

しかし、そんなことは知らない『霧塵会』の連中は。

武器と通信機器を奪い、手錠を嵌めて鉄格子の牢の中に押し込んだだけで、充分だと思っているらしい。

知らないっていうのは致命的だな。

この程度じゃ、俺はともかく、ルリシヤを捕らえたとは言えないぞ。

シェルドニア王国の、ヘールシュミット邸の地下牢からも、投獄10分未満で脱走したくらいだからな。

ルリシヤと二人で閉じ込められても、ちっとも危機感を感じない。

何とかなりそうな気がしてしまう。

慢心は良くないと分かっているが、ルリシヤのこれまでの功績を考えると。

多分大丈夫だろう、と慢心してしまうのも無理もないと思う。

…それはさておき。

「いたたた…。全く乱暴なことをするものだ」

「…」

「捕虜として扱ってくれ、と頼んだのにこれだ。奴ら、国際条約を知らないのか?」

「…マフィアに何を求めてるんだよ?お前は…」

捕虜として人道的な扱いを…なんて、マフィア相手に望めるはずがないだろうが。

相手はマフィアだし、俺達もマフィアだ。

国際的な正しい捕虜の取り扱いなんて、心得ていないのは当然だ。

「まぁ、確かにそうだな」

納得するのかよ。

「そんなことより…これからどうするんだ?」

俺はコンクリートの冷たい床に腰を降ろし、痛みに顔をしかめた。

散々手荒く扱われたものだから、あちこち痣が出来ている。

「ルルシー先輩、頬に痣が出来てるぞ。ルレイア先輩が見たらぶちギレ案件だな」

「良いから、質問に答えろよ」

銃床でぶん殴られたんだよ。受け身は取ったから、骨は折れてない。

それより、これからどうするかだ。

わざと囚われたのも、考えあってのことなんだろう?

「また速攻で脱獄するのか?」

アシミムのもとからも、あっという間に脱走してみせたルリシヤだ。

『霧塵会』の地下牢から脱出することなど、ルリシヤにとっては訳ないだろう。

…と、思ったのだが。

「どうもしないさ。しばらくここで、囚人ライフを楽しむ」

「…?」

珍しく。

ルリシヤにしては、後ろ向きな発言が飛び出した。

…どうかしたのか。

ヘールシュミット邸に囚われたときは、投獄5分足らずで脱獄の話をしていたのに。

今回は囚人ライフを楽しむ、だと?

どういう風の吹き回しだ…?
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