The previous night of the world revolution~P.D.~
ど…。

…どうした?

「お、おい。ルレイア?大丈夫か?」

時間停止の魔法でも食らったか。

完全に固まってしまっている。目の前でひらひら手を振っても無反応。

…本当に大丈夫か?

「ど…どうしたんだよ、ルレイア?動き出せよ」

怖いだろうが。時間停止するな。

ルレイア以外の二人は、それを見て。

「あー…。成程、そういうことですか…」

「俺はこうなると思ってたぞ」

ルーチェスもルリシヤも、何かを知っている様子。

おい、二人で勝手に納得するなよ。

俺にも教えてくれ。ルレイアはどうしたんだ?

「おい、おいルレイア。何かあっ…」

「…ルルシー」

あ、口利いた。

しかしその声は、先程までとは打って変わって、地を這うほどに低かった。

なんか…怒ってる?

俺に対して怒ってるのか?

「な…何だよ?」

俺、何かルレイアを怒らせるようなことしたか?

…しかし。

ルレイアは確かに怒っていた。でもそれは…俺に対して、ではなかった。

「その頬…。…誰に殴られたんです?」

は?頬?

ルレイアに指摘されて、そっと自分のほっぺたを触ってみる。

殴られた片方の頬は腫れていて、触るとズキッ、と傷んだ。

あぁ…これ。

「誰にって…。ここに閉じ込められたとき、ちょっと手荒く扱われただけだ」

銃床で殴られたんだよ。

誰に殴られたのかまでは、俺も覚えてない。

『霧塵会』の誰かってことは確実だな。

でも、そんなのどうでもい、

「そう、そうですか…。俺の愛しいルルシー姫の…もっちもちの柔肌に痣をつけた馬鹿が、ここにいる訳ですね」

…ルレイア、お前…声が低いぞ。 

あと、誰の顔がもっちもちの柔肌だって?

それはお前なのでは?

「…分かりました。ルルシー」

死神の殺気を迸らせていたルレイアは一転、にこっ、と微笑んだ。

…なんか、嫌な予感。

「…何が分かったんだ?」

「上にいる奴、全員ぶっ殺してきます。ルルシーの仇を討ってきますからね」

ほらな。言わんこっちゃない。

ルレイアが突然笑顔になると、絶対ろくなことじゃないから。

「ちょっと待て、ぶっ殺すな。何人か捕らえて尋問して、情報を吐かせ…」

と、言いかけたときには既に遅く。

ルレイアは既に、俺の言うことなど聞いていなかった。

「ルルシーの仇ぃぃぃぃ!!」

叫び声をあげ、鎌を振り回しながら、凄まじい勢いで階上に上がっていった。

…おまっ…!

「ちょ、待てコラ。ルレイア!!」

「僕も便乗してきま〜す!」

「ルーチェス!便乗するな!!」

人の言うことを聞かず、駆け出していく頭の悪い師弟を追って。

俺も、慌てて駆け出した。

まぁ…もう遅いような気がするが…。
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