The previous night of the world revolution~P.D.~
リーダーを騙る女は、言葉にならない呻き声を出してその場に崩れ落ちた。

おっと。ちょっとやり過ぎたか?

いえ、俺も少々苛立っていたもので。

「ぐっ…ぇ…」

呻いてるところ悪いが、まだ聞きたいことがある。

勝手に意識を失うんじゃないぞ。

「ルレイア、お前何を…」

突然腹パンを食らわせた俺を見ても、ルルシーはまだ俺の意図を計り兼ねていた。

やっぱりルルシーは純粋だ。

俺?…俺はもっと純粋。

だからこそ、こいつらの汚いやり口が許せなくて。

「ルルシー。こいつ偽者ですよ」

「え?」

俺がそう言うと、ルルシーは驚いていたけど。

床に倒れていたリーダー詐欺女は、怯えたような顔で俺を見た。

ほら、ビンゴだ。

「リーダーじゃありません。ただの影武者です」

「影武者…!?何で…」

「おおかた、本物のリーダーを逃がす為の時間稼ぎなんでしょう?その証拠に…」

俺は床にしゃがみ、詐欺女の髪の毛を掴んだ。

「や、やめ…!」

「やめません」

詐欺女の制止を聞かず、髪の毛の束を強引に引っ張る。

すると、彼女の髪の毛が全て…スポン、と抜けた。

これにはルルシーも、目を点にしていた。

俺が引っこ抜いたのは、この女の地毛ではない。

ただのカツラ。ウィッグだった。

ウィッグを外すなり、ベリーショートに切られた彼女の本物の髪が現れた。

それから。

「お次は…」

「…!さ、触るな…!」

「嫌です」

俺だって、好きでもない、ターゲットでもない女の顔に手を触れるのは、気が進みませんよ。

いかに俺が、ルティス帝国の歩くエロスと呼ばれる男でも。

リーダー詐欺女の顔の皮膚を掴み、思いっきり引っ張る。

途端、バリバリと紙が破れるような音がして、顔に嵌めていたマスクが取れた。

偽物の顔の下から、この女の本物の素顔…冴えない顔が現れた。

威厳の欠片もない。ただの雌ガキだ。

ウィッグは取られ、顔のマスクも剥がされ。

嘘を全て暴かれた影武者の女は、万策尽きたと言わんばかりに項垂れた。

ルルシーはポカンなご様子。

ついでに、そんな俺達を見ていた『M.T.S社』のメンバー達は、諦めた顔で俯いていた。

…この女が影武者だと知っていて、必死に破れかぶれの演技していた訳だ。

…やれやれ。

こんなことだろうと思いましたよ。全く馬鹿馬鹿しい顛末になったものだ。
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