The previous night of the world revolution~P.D.~
正直、今すぐこの場を立ち去りたかったのだが。

セカイさんは。

「それって、何のお仕事なの?」

と、突っ込んだことを聞いていた。

それは…。

「いえ、あの…。それは、俺も詳しくは聞かされてなくて…」

まさか、『青薔薇連合会』の裏切り者に、粛清を加えに行っていましたとも言えず。

しかし、セカイさんは俺より一枚上手だった。

「今日は裏切り者の粛清に行くんだって、ルーチェス君言ってたよ」

「…」

思わず、言葉を失ってしまった。

…知ってたのか。ルーチェスさん、喋ってたのか。

とすると、ますます誤魔化すのか難しい…。

「大丈夫なの?ルーチェス君は」

当然の疑問である。

「えぇと…。俺も詳しくは聞いてなくて…」

俺は馬鹿の一つ覚えのように、同じことを繰り返した。

「でも、ルーチェスさんにはルルシーさんとルレイアさんがついてるから…。心配要らないよ」

挙げ句俺の口から出てきたのは、そんな安っぽい気休め。

…もっと気の利いたことは言えないのか。俺は…。

「そっか…。分かった。明日は帰ってくるのかな?」

うっ…。

次々と、答えに困る質問が続く。

大丈夫、明日には帰ってくるよ…と言えたら、どんなに良いか。

でも…現状ルーチェスさんは病院に入院していて、意識も戻っていない状態だ。

明日には必ず戻る、なんて言い切ることは出来ない。

明日も目を覚まさなかったら…当然明日も帰ってこられない訳で。

今ここで俺が気休めを言えば、今日のところは切り抜けられる。

が、もし明日も帰れなかった場合、セカイさんをぬか喜びさせてしまうことになる。

かと言って、「明日も無理だと思う」と言えば、彼女がますます落ち込むのは目に見えている。

何と答えたら良いんだ、俺は…。

「さ、さぁ、どうかな…。俺も詳しいことはよく…」

結局、馬鹿の一つ覚えでそう繰り返すだけ。

嘘を付くのが下手過ぎるにも程がある。

しかし。

「ふむふむ…。成程、さては…本当はお仕事が長引いてるんじゃないんだね?」

ぎくっ。

思わず声が出そうになるのを、俺は必死に堪えた。

あまりに俺の嘘が下手なせいで、見破られてしまった。

「いや、そんなことは…」

「うんうん、良いんだよ分かってるから。…可愛い女の子と、ホテルでイチャイチャしてるんでしょ?」

「…は?」

しまった。素で返事をしてしまった。

セカイさんは、にまにましながら悪戯っぽい声で言った。

「それとも、格好良いお兄さんとイチャイチャしてるのかな?いや、ルーチェス君の好みは、ちょっと渋いおじさんだったかな」

「…」

…え…えぇと…。

…何だかセカイさん、俺の嘘を見抜いたのは良いとして。

別の方向に誤解してないか?
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