The previous night of the world revolution~P.D.~
「可愛い奴めー、全く。誰とイチャイチャしてるなかな〜」

夫の浮気を疑っているというのに、何故嬉しそうなのか。

あなたはそれで良いのか?

「是非会わせて欲しかったなぁ。ルーチェス君のお妾さん」

おっ…。

またしても、吹き出しそうになるのを必死に堪えなければならなかった。

…クランチェスカ家では、決して聞くことの出来ないフレーズだな。

アンブローシア家では普通なんだろうか。

「もう少し仲良くなったら、いつか会わせてくれるかも。楽しみ〜」

「…」

…楽しみなのか?

それから…これは訂正するべきなのか?

「ルーチェスさんはよその異性…や、同性とデートしてる訳じゃなくて…」と言うべきか?

ルーチェスさんの名誉を思うなら、言うべきである。

…しかし。

「いや、あの、セカイさん。ルーチェスさんは…」

「良いの良いの、大丈夫。分かってるから」

何を分かっていると?

「外泊の理由なんて、奥さんには言えないもんだよ」

「え、えっと…」

「お妾さんとイチャイチャしてるなら、私が口を挟むと邪魔だよねー。きっと満足したら帰ってくるよ。どんな子とイチャイチャしたのか、後で教えてもらわないと」

…何故うきうきしているのか。

変な方向に誤解してくれて、俺としては詮索を免れて助かったのだが。

しかし、ルーチェスさんの名誉が脅かされている気がする。

訂正…した方が良いんだろうけど。

でも…「危険な粛清任務が長引いていて帰れません」と言うより。

「浮気相手とホテルでイチャイチャしてるので帰れません」と言った方が…その…。

…平和、だよな。

…いや…それはそれで、家庭によっては普通に修羅場なんだけど…。

アンブローシア家では、全然修羅場でも何でもなさそう。

それに…そう誤解してくれていた方が、多分セカイさんの精神衛生にも良いと思う。

何より、セカイさん本人がそのように信じ込んでいるなら…。

…下手に口を出さない方が良いのかも。

ルーチェスさんの名誉は傷つくかもしれないが…それはまぁ、日頃のおこな、

あ、いや…。帰ってから、自分で誤解を解いてもらうことを期待しよう。

よし。

済みませんルーチェスさん。俺、嘘つくの向いてないんで。

セカイさんの誤解を解かないまま、あなたが浮気していると思わせておくことにします。

「教えてくれてありがとね、ルヴィア君」

「あ、あぁ…。それじゃ、また…」

「うん!フューニャちゃんにも宜しくね〜」

ひらひらと手を振って、セカイさんは玄関の扉を閉めた。

…ホッ。

ひとまず、切り抜けたか…。良かった。
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