The previous night of the world revolution~P.D.~
…と、思っていたのも束の間だった。

セカイさんへの連絡ん終えて、自分の部屋に戻ってきてみると。

「フューニャ、ただいまー」

「…」

…あれ?

いつもなら、玄関先までフューニャが出迎えに来てくれるんだけど…。

今日は静かだぞ。

出迎えに来てくれたフューニャの頭を撫でるのが、俺の帰宅後の一番の楽しみなので。

出迎えがなかったら…ちょっと切ないって言うか…物足りないって言うか…。

つけ汁のないつけ麺食べてる気分。

つけ汁のないつけ麺って、それはもうただの麺だ。

もしかして、今留守にしてるのか?

何処か買い物にでも行ってるとか?

あ、いや…でも、玄関先に靴置いてあったから、出掛けてる訳じゃないか…。

「フューニャ…。ただい…ま?」

フューニャの姿を探して、廊下を抜けてリビングに向かうと。

案の定フューニャは、ソファに座ってテーブルと向き合っていた。

あぁ、ほら、良かった。居たんだ。

「…ふむ。大丈夫そうですね」

と、フューニャはポツリと呟いた。

…大丈夫って、何が大丈夫なんだ?

そのとき俺は、フューニャの手元…テーブルの上に並べられたモノを見て、思わず悲鳴をあげそうになった。

…骨だった。

大小様々な骨が、テーブルにいくつも並べられていた。

めちゃくちゃびっくりした。

あれって…何の骨…?

…チキンだ。きっとチキンの骨だよ。

そう信じよう。今日もフューニャを愛する為に。

「あの…。あのさ、フューニャ…」

「ふむ…宜しい」

何が宜しいのか。

「あの、フューニャ」

「はい、何ですか。お帰りなさい」

「…ただいま…」

ようやく返事をしてくれたのは嬉しいけど。

でも…。

「な…何やってるんだ?」

聞いても良い?聞いても大丈夫なことなのか?

俺の躊躇いをよそに、フューニャはあっけらかんとして答えた。

「占いです」

占い?

うちのフューニャは、箱庭帝国にある秘境の里の出身。

占いとかまじないが得意で、しかもそこらのインチキ占い師とは違って、フューニャの占いはかなりの精度を誇っている。

アイズさん曰く、ある種の未来予知に近いとか。

いやぁ凄い。俺の嫁。

可愛いし、そんな特技もあるし、家事も得意だし、可愛いし。

文句のつけようがない…のは良いのだが。

しかし、どうしても聞きたいことがある。

「…占いするのに、何で骨が必要なんだ?」

「だって、これは骨占いですから」

「骨占い…!?」

初めて聞いたぞ。何だそれは。

は、花占いとか、タロット占いじゃなくて?

タロットカードを並べる占い師はいても、骨を並べる占い師は滅多にいないだろう。

「あ、あのさフューニャ…」

「何ですか」

聞くまい聞くまいと思っていたけど…。でもやっぱり、気になる。

「その…骨占いに使う骨って、何の骨…」

「…」

フューニャはしばし無言で、俺のことをじっと見つめ。

そして、スッ…と視線を逸らした。

…あ、なんかヤバい香りがする。

「…さて、それでは夕飯にしましょうか」

「…はい…」

あれはチキンの骨、チキンの骨。

そう思おう。今日もフューニャを愛する為に。
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