The previous night of the world revolution~P.D.~
しかし。

「…あのな、お前。ふざけて良い状況じゃねぇんだぞ」

ルルシーは激おこだった。

「記憶がないって、それめちゃくちゃ不味いじゃないか」

「だ、大丈夫なの…?まさかその…洗脳されてるとか…?」

「ルー公あれじゃね?むゆーびょーかんじゃ、って奴なんじゃね?」

ルルシー、シュノさん、アリューシャの順でそう言った。

夢遊病患者か…。状況が状況なだけに、完全に否定することは出来ないな。

「もしかして、これが『M.T.S社』の持ってる新兵器なのか?相手の記憶を消して、意識を奪う兵器…とか」

それは恐ろしい仮説ですね、ルルシー。

「ないとは言い切れないのが辛いところだな。白い塔から謎の電波を発生させて、人を洗脳する時代だからな」

ルリシヤが言った。

全くですよ。あれは嫌な思い出でしたね。

シェルドニア王国の技術力で可能なことなら、ルティス帝国でも製造可能だろう。

…とはいえ…。

「別に大丈夫ですよ?僕…。何処も痛くないし、皆さんに敵対したいとも全く思ってませんし。ましてや、昨日の短時間で完全に洗脳するのは無理でしょう?」

ルーチェスが俺達に尋ねた。

確かに。

俺達はかつて、怪しい電磁波を発生させ、他人を洗脳する恐ろしい装置の餌食となったことがあるが。

あれは、電磁波を浴びせた者を一瞬で洗脳するような力はなかった。

少しずつ時間をかけて、じわじわと侵食するように洗脳するものだった。

いくら、ルティス帝国の技術力が、シェルドニア王国に負けないくらい進んでいるとはいえ。

ルーチェスと別行動していたあの短時間で、ルーチェスを完全に洗脳することは不可能だろう。

いかに怪しい新兵器と言えど。

それに、見たところルーチェスには、洗脳の影響を受けた様子は全くない。

ついでに言うと、これは俺の勘だが…ルーチェスは何も、洗脳された訳ではないだろう。

多分心配のし過ぎだ。俺はそう思う。

根拠がある訳じゃないが、そんな気がする。

「記憶がないのは昨日だけ?他のことは覚えてるんだよね?」

アイズが、ルーチェスに確認を取った。

それは重要なことですね。

「えぇ。多分」

「私達のことは分かる?覚えてるんだよね?」

「はい、勿論。俺の尊敬するフェロモンお化けのルレイア師匠、その妻であるルルシーさん」

うん。よく覚えているようだ。

全く間違ってない。

「それから、ルレイア師匠が大好きなシュノ姐さんと、『青薔薇連合会』の時期首領のアイズ総長、超絶スナイパーのアリューシャさん。でしょう?」

「そう、正解だよ」

「おうよ!『青薔薇連合会』の超絶スナイパーと言えば、このアリューシャよ!」

素晴らしい。ちゃんと覚えているようだ。

「…おい、誰が誰の妻だって?やっぱり記憶改ざんされてないか?」

「自分のお嫁さんのことは覚えてる?」

「勿論ですよ。セカイさんでしょう?」

「良かった。ちゃんと覚えてるんだね」

「そりゃあ忘れませんよ。愛しい妻のことですからね」

「おい。俺の話を聞けよ」

まぁまぁルルシー。ルーチェスはちゃんと、大切なことは覚えてると分かったんだから。

細かいことは良いじゃないですか。細かいことは。

それにほら、俺とルルシーが相思相愛の夫婦であるという事実は変わりないですし。

「成程…。じゃあ、昨日の記憶だけがないのか…不思議だね」

「胸に焦げた痕がついていたんだが、それについて何か覚えていることはないのか?」

ルリシヤが、ルーチェスに尋ねた。

あぁ、その謎もあったな。
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