The previous night of the world revolution~P.D.~
「帝国自警団か。それはまた懐かしい名前だな」

オルタンスは、あっけらかんとしてそう言った。

同感だが、しかし本人の前でそれを言うか。

「このまま自然消滅するのかと思っていたんだが、そうでもなかったか」

だから、本人の前で言うなよ。

これだから、オルタンスはすぐに敵を作ることになるんだ。

案の定、ブロテは気を悪くしたようで。

「…」

無言で、険しい表情をしていた。

あーあ、怒らせた。どうなっても知らんぞ。

しかも、オルタンスはまだまだ足りぬとばかりに、ド天然に火に油を注ぎまくる。

「アシスファルト帝国に行ってたんじゃなかったのか?帰ってきたのか」

「…そうだよ。私は帰ってきた」

「そうか。それはお帰り」

ただいまと言ってもらえるとでも思ったのか。

案の定、ブロテは眉間にシワを寄せて、オルタンスのふざけた台詞をスルー。

「アシスファルト帝国に留学して、帰ってきてみたら…祖国はこの始末。あまりの変わりように驚いたよ」

「そうか。その間に、帝国自警団も随分変わったな。もっと気の弱そうな女団員が、団長代理を務めていたはずだが」

「マリアーネのことだね」

「そんな名前だったか?」

…全く記憶にないな。

成程、自警団の影が薄くなっていたのは。

元々団長だったこの女が、マリアーネとやらいう団長代理に自警団を任せ、アシスファルト帝国に留学していたからなんだな。

で、そのマリアーネは、団長であるブロテと違って、それほど自己主張の激しいタイプではなかった。

そのせいで、すっかり自警団の活動は下火になっていたのだろう。

しかし今回、団長だったブロテが10年ぶりに帰国。

帰ってきてみると、何もかもが自分の記憶にある帝国自警団とは違っている。

これを危機的状況と見たブロテは、こうして満を持して帝国騎士団に乗り込んできた…と。

そういうことか。

理解してみると、案外つまらないな。

「私がいない間に、帝国騎士団は見る影もなく腐敗してしまったようだ」

…とのこと。

「あろうことか、『青薔薇連合会』などという非合法組織と手を組んでいたとは…」

「…」

「誇り高い帝国騎士じゃなかったの?恥ずかしくないの、そんなことをして」

…そう言われてもな。

俺は別に恥ずかしくも何ともないが、アストラエアやユリギウス辺りは、耳が痛いだろうな。

…だが。

「恥ずかしいとは思わないな。『青薔薇連合会』の手を借りたことを」

オルタンスは、相変わらずあっけらかんとしてそう言った。

…そうだな。それは俺も同感だ。

多分、ルシェやルーシッドも同じ気持ちだろう。
< 33 / 634 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop