The previous night of the world revolution~P.D.~
オルタンスは、常日頃血迷ったことばかり言ってるが。
 
真面目になろうと思えば、たまには真面目になれる奴である。

ならいつも真面目に生きろよ、と思うが…それは嫌みたいだ。

一応これでも、帝国騎士団長だしな。

「俺達は確かに、これまで幾度となく『青薔薇連合会』の力を借りてきた。それは事実だ」

オルタンスは、きっぱりとその事実を認めた。

ふざけたことばかり言ったりやったりしているが、たまにこうして真面目になるから、弾劾しようにも出来ないんだよな。

中途半端な奴だよ。

「だが、それを恥じたりはしない。俺達は常に、そのとき自分達が取れる最良の選択肢を選んできた」

「マフィアの手を借りることが、最良の選択肢だったと?」

「あぁ、そうだ。箱庭帝国の革命、シェルドニア王国との外交問題、『天の光教』と『帝国の光』の一件…。挙げ出せばキリがないが…」

俺達、そんなに『青薔薇連合会』と手を組んでたんだな。

冷静に考えると、俺達もなかなか大胆なことをしてるな。

非合法組織に、これほどの借りを作るとは。

しかし、そんなことは今更言っても仕方ない。

「いずれの事件でも、『青薔薇連合会』の手を借りなければ、もっと酷い事態になっていたのは言うまでもない」

…その通り。

今になって文句を言えるのは、『青薔薇連合会』の助力のもと、いずれの件でも最小限の被害に留めることが出来たからだ。

『青薔薇連合会』の手を借りず、「誇り高く」帝国騎士団の力だけで、事を解決しようと思ったら…。

…今よりもっと酷い事態が待ち受けていたことは、言うまでもない。

恐らく箱庭帝国は、今頃革命に失敗して、『青薔薇委員会』のルアリスは処刑。

未だに憲兵局の独裁政治が続き、箱庭帝国の国民達は貧しさに喘いでいただろう。

更にルティス帝国では、『天の光教』などという怪しげな宗教が蔓延。

同時に『帝国の光』なんてものも台頭してきて、今頃ルティス帝国は共産主義国家に変わっていたかもしれない。

最悪、国が割れて内乱状態になっていてもおかしくなかった。

あるいは、シェルドニア王国に攻め込まれ、戦争状態になってたかもな。

それどころか、あのシェルドニア王国の秘密兵器。

『光の灯台』ならぬ…『白亜の塔』が、電信柱のごとく、国中に乱立していたかもしれないのだ。

そう考えると、寒気がするな。

しかし、そうなっていてもおかしくなかったのだ。

俺達が帝国騎士団の正義とやらに固執し、『青薔薇連合会』の手を借りずにいれば。

恥を忍び、誇りを捨て、彼らに助力を頼んだからこそ、今がある。

何のかんのありつつも、一応表向きは平和なルティス帝国が。

お前だって、呑気にアシスファルト帝国で留学していられたのは、回り回って『青薔薇連合会』のお陰でもあるんだぞ。

彼らが手を貸してくれなければ、今頃ルティス帝国は大惨事だっただろうからな。

つまり、誰にも『青薔薇連合会』を責めることは出来ないって訳だ。

ついでに、俺達にもな。

「いずれの場合も、『青薔薇連合会』の手を借りなければ、もっと酷い事態になっていたはずだ。故に、我々は『青薔薇連合会』の手を借りたことを後悔していない」

アストラエアとかは、未だに後悔してそうだけどな。

しかし何度考えても、あれが一番最良の選択肢だったと思っている。

『青薔薇連合会』に協力を乞うことが、正しい選択だったのだと。
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