The previous night of the world revolution~P.D.~
「それは無理だよ、アリューシャ。もう少し慎重に動いた方が良いんだ」

アイズはアリューシャを宥めるように言った。

「何で?だって敵なんだろ?」

敵なら狙い撃て。非常にシンプルで分かりやすい理屈である。

その単純明快な理屈、俺は嫌いじゃないですよ。

その理屈が毎回、どんな場合でも通用するなら良かったんですが。

「『M.T.S社』の連中は、確かに私達の敵だよ。でも、帝国自警団は違う」

「敵を庇ってんなら、そいつらも敵じゃね?」

間違ってはいない。

「そうだね、その通りなんだけど…。でも、帝国自警団を敵に回して攻撃して、得られるメリットに対してデメリットが大き過ぎる」

「…めろっと?」

「メリットだよ、メリット。帝国自警団を攻撃しても、損ばかりで得になることはほとんどないって意味」

「そうなの?」

「そうだよ」

「…ほーん…」

首を傾げながら、一応納得した(?)らしいアリューシャ。

納得したと言うか、アイズがそう言うなら…って意味で理解しただけだろうな。

「何で連中が帝国自警団なんかと…。帝国自警団は正義の組織じゃなかったの?何でマフィアと組んでるの」

シュノさんもまた、当然の疑問を口にした。

それは皆思ってることでしょうね。

しかし、そんなシュノさんの疑問に対するアイズの答えは。

「それは私にも分からない」

アイズが無能なんじゃないですよ。

正直なところ、俺にも分からないから。

あいつら、何で『M.T.S社』なんかを匿ってるんだ?

それとも、ブロテ達もそうと知らずに匿っているのか?

身分を隠して乞食の振りをして、行くところがないから匿ってくれと縋ったとか?

あいつらにはプライドというものがないのだろうか。

そして帝国自警団の奴らは、頼まれたらマフィアでも匿うのか。

どいつもこいつも、『青薔薇連合会』以外の組織は無能ばっかりだな。

「帝国自警団が『M.T.S社』と一時的でも手を組むなんて、そんな状況になる理由が分からないね」

「マフィアを匿って得になることなど、帝国自警団にはないはずだが」

アイズと、ルリシヤもそう言った。

自称正義の組織が、何をまたトチ狂って、落ち延びた『M.T.S社』のリーダーと幹部達を匿う気になったのか。

「足を洗うから助けてくれ」とでも縋ったのか?

あの甘ちゃんなブロテのことだから、それは有り得るかもしれない。

「…いずれにしても、この目で確かめてみないことには分からないね」

アイズがそう言った。

情報屋は確定情報だと言っていたらしいが、実際にその目で見た訳ではあるまい。

誤情報である可能性も、無きにしもあらずだからな。

「すぐに帝国自警団本部を強襲しよう。アシュトーリアさんには、私から話しておく」

「おぉ、カチコミだな!?アリューシャも行く!」

「私も行くわ」

アリューシャとシュノさんは、非常に乗り気。

二人が一緒に来てくれたら、それはそれは頼もしいのだが…。

「いや、奇襲をかけるメンバーは二人だけに限定する」

…そう言うと思ったよ、アイズなら。

そして…今回もアイズの意見が正しい。

いつもいつもアリューシャやシュノさんを置いていってしまって、非常に申し訳なく思っているのは事実である。
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