The previous night of the world revolution~P.D.~
「…」

「…」

しばし、ブロテとオルタンスは睨み合っていた。

いや、正確には、睨んでいたのはブロテだけだ。

オルタンスの方は、浮き輪を片手でいじりながら、ぽやんとブロテを見つめ返していたに過ぎない。

いい加減お前は、その浮き輪から手を離せ。

「…もう良い」

やがてブロテはそう呟き、オルタンスから視線を逸らした。

お?諦めたか?

「これ以上話しても無駄だ。腐敗しきった、退廃しきった帝国騎士団に、何を言っても無駄」

ふーん。悪かったな。

俺達としても、お前の凝り固まった頭に何を言っても無駄だと気づき始めたところだよ。

「屁理屈をこねて、『青薔薇連合会』に屈服する自分達を正当化するとは…」

と、吐き捨てるようにブロテが言った。

…。

…別に、屈服してはいないのだが?

「皇太子を人質に取られ、武器や資金を強請られても、平然としているなんて…」

…。

…ん?

ちょっと待て。何の話だ?

「私はあなた達のように、闇の権力に屈したりしない。帝国騎士団が道を踏み外したら、それを正すのが帝国自警団の役目」

「…」

「必ず、その役目を果たしてみせるから…!」

…あ、そう。

それは結構だが、それよりお前、今…妙なこと言わなかったか?

誰が人質だって?

誰が強請られてるって?

「行こう、皆。この人達とこれ以上話しても無駄だよ」

「…あぁ」

ブロテは、一方的に会話を終了。

不法侵入しておきながら、何事もなかったように、用事を済ませて帰っていった。

…。

…何だったんだ、あいつ。

「…えぇと。あの方…何か誤解していませんでした?」

と、ルーシッド。

奇遇だな、ルーシッド。俺もそう思った。

「今からでも…正しておくべきだろうか?」

ちょっと焦ったような顔で、リーヴァが呟いたが。

「…俺はただ、ルレイアと海に行きたいだけなのに…。何故こんな面倒なことになるんだ…」

「…」

オルタンスの頭の中に、最早ブロテはいなかった。

…あのな。

お前はいい加減、海を諦めろ。
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