The previous night of the world revolution~P.D.~
ルルシーは俺に覆い被さったまま、動けなかった。

「…ルルシー…?」 

「…っ…。ルレイア、無事か…?」

苦悶の表情を浮かべたルルシーは、この期に及んで、いの一番に俺の心配をした。

相変わらず心配性なんだからとか、そんなこと言ってる場合ではなかった。

一瞬で頭に血が上った俺は、コートの内側から拳銃を取り出し、レーザー光線が発射された方向に向かって発砲した。

しかし、レーザー銃を撃ったであろう犯人の影は、すぐさま廊下の影に消えていった。

奇襲に失敗したと見るや、すぐに逃げ出したのだ。

追いかけたい衝動に駆られたが、それより今はルルシーの方が大切だった。

「っ…!追って!」

「は、はい!」

一連の様子を呆然と見つめていたブロテが、我に返って部下に指示をした。

ブロテに指示を受けた部下は、急いで廊下を走って追いかけていった。

しかし、俺はそれさえ見ていなかった。

ルルシーを抱き起こし、すぐさま「傷口」を見た。

「ルルシー、大丈夫…」

俺は思わず言葉を失った。

ルルシーの左脚、ふくらはぎの辺りに、見たこともないような傷痕が出来ていた。

銃創とも刃物傷とも違う。

筋肉が抉れ、傷口の断面には火傷をしたような痕が残っていた。

レーザー光線で焼かれると、こんな傷痕が出来るのか。

一生知りたくなかった。

ましてや、それがルルシーの傷なら。

唯一の不幸中の幸いは、傷口の断面が焼けているお陰で、出血はしていないという点だ。

「ルルシー、俺を庇って…」

「…お前が怪我をするよりマシだ。気にするな」

ルルシーは額に脂汗を浮かべながらも、俺に微笑んで言ってみせた。

…あなたという人は…。

「すぐに応急処置を!」

青ざめたブロテが、そう叫んだ。

すぐさま、帝国自警団の医療班が駆けつけてきた。

相手が『青薔薇連合会』の幹部であろうと、関係なく治療してくれるらしい。

…ブロテに任せて、ぼーっとしている訳にはいかない。

「大丈夫ですよ、ルルシー…。こんな傷、すぐに良くなりますから」

俺はスマートフォンを取り出し、後方にいるルリシヤとルーチェスに緊急を告げる連絡を入れた。
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