The previous night of the world revolution~P.D.~
…処置室の前で待機すること、およそ二時間。

そろそろ痺れを切らしてきた頃に、処置室の扉が開いた。

「!ルル公!終わったのか?」

半分居眠りしていたアリューシャが、それを見て飛び起きた。

扉の向こうから、看護師の手でストレッチャーが運ばれてきた。

ルルシーはストレッチャーに横たわって、酸素マスクを嵌められ、両腕に点滴の針を刺され、身体中に包帯を巻いて…、

…と、いうことはなく。

「あれ…。お前ら、揃いも揃ってそこで待ってたのか?」

それどころかぱっちりと目を開けて、何てことない顔をして、普通に喋っていた。

まぁ、それはそうですよね。

怪我したのは足ですから。頭の方は無事ですよ。

色々堪えて我慢していたけど、ルルシーの顔を見ると、もう我慢出来なかった。

俺は無言で、ルルシーの身体に抱きついた。

痛かったですかね。ごめんなさい。

でも、どうしても我慢出来なくて。

「…ルルシー…。…大丈夫ですか?」

「ルレイア…。大丈夫だ、心配するな」

『青薔薇連合会』で一番心配性のあなたに、心配するなと言われる日が来るとは。

なんという皮肉だ。

「お前が暴走してなくて、俺は安心したよ」

「…ルルシーの頼みですから。本当は今すぐ走り出したいですけど」

「走り出すなよ。一人で暴走するな。俺は今一緒に行けないんだから、お前も何処にも行くな。ここにいろ」

…はい。

ルルシーがそう願うなら、その通りにしますよ。

だって、その怪我は俺が…。俺のせいで…。

「こちらのことは、何も心配しなくて大丈夫だからね、ルルシー」

アイズが、ルルシーを安心させるように言った。

こちらのこと…。

つまり、俺達がさっき話していたような…『M.T.S社』のリーダーと幹部の行方とか。

偽情報を掴ませてきた情報屋の行方とか、そういうことだ。

「私達で上手くやるよ。君はとにかく、身体を癒やすことだけを考えて」

「…悪いな」

「謝る必要なんてないよ。ちょっとした臨時休暇だと思って、ゆっくりしてて。…ルレイアとね」

さりげなく俺を入れてきた。

俺が暴走しないように見張っててね、って意味だろう。

…分かってますよ。

怒りに任せて帝国自警団を攻撃して、メリットなんて一つもないってことは。

俺の気が晴れるだけだ。

ルルシーも「ここにいろ」と言うし、アイズも止めるし…。

ますます、俺が暴走する理由がなくなってきた。

…勿論、ルルシーにこんな怪我を負わせてくれた帝国自警団を許すつもりはない。

だが…今は大人しくしておいてやろう。

他ならぬルルシーの頼みだから。

ルルシーを心配させて、傷の治りを遅くしたくはない。

「ルルシーも、ルレイアも。しばらくゆっくり休むと良いよ。…捜査に何か進展があったら、逐一報告するから」

と、アイズに言われ。

ひとまず、この場は解散ということになった。
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