The previous night of the world revolution~P.D.~
「これ、開けても良いか?」

「えぇ、勿論です」

俺はルーチェスにもらった紙袋の中に手を入れた。

見た目に反して、結構ずっしりと重い。

果物や菓子かと思ったのだが、食べ物だったらこんなに重いはずないし…。

何が入ってるんだろうな?

紙袋の中に触れた感触で分かった。

「あ。これ本か?」

「えぇ、本です。暇潰しに丁度良いかと思いまして」

成程、そういうことだったか。

ルーチェスもルリシヤと同様、俺が入院生活で退屈しているのではないかと心配して。

暇潰しになりそうなものを選んで、持ってきてくれたんだな。

そういう気遣いをしてくれるから、いくら不健全な連中だからって、「帰れ」とは言えないんだよ。

ズルいだろ。

「ありがとうな、ルーチェス。ルーチェス嫁も。わざわざ…」

「いえいえ」

ところで、この本って。

どうやら雑誌みたいな大きさなんだが、一体何の本なんだ?

暇潰しの定番と言ったら…ナンプレとか数独とか、クロスワードとか?

アリューシャじゃないけど、俺ああいう頭を使う系統は苦手なんだよな。

まぁ、でもルレイアもついててくれるから。

いざとなったら、多分ルレイアが一人で解いてしまうだろう。

それだと俺じゃなくて、ルレイアの暇潰しになってしまいそうだが。

それはそれで良い。

せめてクロスワードだったら、俺でも歯が立つかもしれないんだが…。

そう思いながら、俺は紙袋の中に入っていた本の一冊を、試しに引っ張り出してみた。

すると。

…出てきたのは、クロスワードともナンプレともかけ離れたブツだった。

…。

…へぇ。

最近のパズル雑誌の表紙って、イケメンとイケメンがガッチリ組み合った絵が描かれてるんだな。

それは知らなかったなー。

「…」

俺は無言で、スッと雑誌を紙袋に戻した。

多分俺の見間違いだ。そうに違いない。

再び紙袋に手を入れて、別の本を掴んで引っ張り出す。

今度こそパズル雑誌。かと思いきや。

またしても、イケメンとイケメンが半裸で濃厚な接吻を交わしている表紙。

…最近のパズル雑誌、凄いな。

まるでBLエロ雑誌みたいじゃないか。

…。

…って、そんな訳があるか。

「どうですか?俺のお気に入りの絵師さんのエロ本なんです」

目をキラキラさせてルーチェスが言った。

エロ本って言っちゃってるしな。

やっぱりそうか。そうなんだな?

一風変わったパズル雑誌であって欲しいと思ったが、やっぱりそんなことはなかった。

当たり前だろ。こんな不健全なパズル雑誌があってたまるか。

「お前は入院患者に対して、何を差し入れてんだ…!?」

お前の頭の中の辞書、ちょっと見せてくれないか。
 
「常識」の欄に何て書いてあるのか、切実に見てみたい。

きっと俺の「常識」の意味とは全くかけ離れたことが書かれているに違いない。

「入院患者だからですよ。セカイさんと相談して決めたんです。ねぇ?」

嫁に同意を求めるルーチェス。

「うん。一ヶ月近くも入院することになるなら、きっと溜まるものも溜まってるだろうと思ったから」

成程。この二人なりに、俺を心配してくれてたんだな。

そうとも知らず、責めるようなことを言って済まなかった…。

…って、そんな訳があるか。
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