The previous night of the world revolution~P.D.~
俺が訪ねていくと、大抵仕事を放り出して妙なことをしているオルタンスだが。

今日くらいは、真面目に仕事に精を出していて欲しい…と。

思っていたときが、俺にもありました。

「おい、オルタンス。邪魔するぞ」

「…」

ルーシッドと共に、オルタンスの執務室に入ると。

奴はソファに腰掛けて、ティーカップを傾けていた。

どうやら休憩中であるらしい。

良かった。

壁いっぱいのポスターを眺めたり、謎の痛バッグを作成していたりはしなかった。

茶を飲んでるだけなら良いだろう…と。

思っていたのは、オルタンスの目の前に置いてある皿を見るまでだった。

「…!?何だそれ」

オルタンスが奇怪な行動をしているのはいつものことなのだから、いちいち突っ込む必要がないのは分かっている。

が、そんなものを見せられたら、誰だって突っ込みたくなる。

テーブルの上の皿には、謎の食べ物が乗っていた。

真っ黒のトーストと、真っ黒のパイ…みたいな食べ物。

…黒焦げ…?

何が嬉しくて、こいつは消し炭の塊を食べてるんだ?

罰ゲーム?

しかもよく見たら、ティーカップの中身も墨汁のように真っ黒だった。

…コーヒー…?

でも、部屋の中に立ち込める香りはコーヒーのものではない。

むしろ、芳醇な紅茶の香りがするのだが…。

一体その飲み物は何なんだ。

すると、オルタンスはよくぞ来てくれた、とばかりに膝をポンと叩いた。

「お前達、良いところに。良かったら、お前達も食べていかないか」

「断る」

俺は消し炭を口にする趣味はないからな。

ついでに、お前と仲良くティータイムを過ごす趣味もない。

要件だけさっさと伝えて、さっさと帰りたい。

…それなのに。
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