The previous night of the world revolution~P.D.~
「ついホールで買ってしまってな。一人では食べ切れないと思っていたところなんだ。ちょっと待ってくれ、お茶を淹れてくるから」

「…」

俺、今「断る」って言ったよな?

何で勝手に説明と準備を始めてるんだよ。

「?どうした?早く座ると良い」

「…分かったよ」

消し炭を食べる趣味はないが、とりあえず席につくくらいはしよう。

ルーシッドも、観念したようにソファに座った。

悪いな、ルーシッド。でもこうなった以上、俺とお前は今、一蓮托生だぞ。

オルタンスの奇怪な趣味に、俺だけ付き合わされるのは御免だからな。 

「さぁ、出来たぞ」

しばらく待っていると、オルタンスが湯気を立てるティーカップを二つと。

そして、例の消し炭トーストと消し炭パイの皿を持ってきた。

…改めて見てみると、かなりのインパクトである。

本当に消し炭じゃないか…。オルタンスは、こんなものを平気で食べてるのか…?

味覚がおかしくなったのか、頭がトチ狂ったのかどっちだ?

「?どうした。冷めないうちに食べると良い」

オルタンスは平然と、消し炭パイをぱくつきながら言った。

お前、本当に頭大丈夫か?

何が嬉しくて消し炭を食ってるんだ?

表面のパイ生地が真っ黒なだけじゃない。中に入っているカスタードクリームも、果物のコンポートも、全てが真っ黒。

トーストの方も、添えられているクリームやアイスまで真っ黒だからな。

ティーカップの中身も、ほかほかと湯気を立てる…真っ黒な液体。

…どうなってるんだ、これは…?

「あの…オルタンス殿、これは一体…?」

勇気のあるルーシッドが、恐る恐るオルタンスに尋ねた。

よくぞ聞いてくれた。お前は偉いぞ、ルーシッド。

すると。

「一体…?と言われても…ただのフレンチトーストだが?」

俺が見たのは、フレンチトーストとは程遠い何かだったよ。
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