The previous night of the world revolution~P.D.~
「何処で買ってきたんだよ、こんなもの…」

買う方も買う方だが、このような常識から外れた商品を売る方も売る方だぞ。

ルレイアじゃなかろうに、何故真っ黒なんだ。

「今帝都で話題沸騰中の喫茶店、『ブラック・カフェ』のテイクアウト商品だ」

と、オルタンスは答えた。

そんな店があるのか。

そんな店が話題沸騰中なのか。

ルティス帝国の民は、一体何を考えてるんだ?

「その店で提供される全ての商品は、この通り真っ黒なんだ。黒いパフェに黒いホットケーキ、サンドイッチに挟んであるトマトでさえ真っ黒らしいぞ」

黒いトマトなんて、気色悪くて食えねぇよ。

「いかにもルレイアの好きそうな店だな…」

そして、ルレイアが好きそうなものはオルタンスも好きな訳で…。

だから、オルタンスもわざわざ買いに行ったんだろう。

「あぁ。この店を作ったのはルレイアだから」

まさかの御本人だった。

そういうことかよ。ルレイアの店だったのかよ。

色々納得したわ。

しかし、そんな店が繁盛するとは…。ルティス帝国の未来が心配だよ、俺は。

「どうやって黒くしてるんだろうな、これ…。着色料か…?」

黒い着色料を振り掛けまくったのか?そうでもしないと黒くならないよな…。

…と、思ったが。

「いや、着色料は一切不使用だそうだ」

謎のこだわりを見せていく。

「原材料を何処から仕入れているのかは知らないが、恐らくシェルドニア王国じゃないのか?シェルドニアには確か、珍しい食材がたくさんあるからな」

「…あ、そ…」

このとき、俺は全く知る由もなかった。

このフレンチトーストは、シェルドニアクロヒツジの唾液に漬けて焼いたものであることを。

このアップルパイのパイ生地は、シェルドニアクロトナカイの胆嚢を磨り潰して混ぜて作ったものであることを。

知らなくて正解だった。

もしこのときそれを知っていたら、俺は今頃食べたものを盛大にリバースしていたに違いない。
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