The previous night of the world revolution~P.D.~
何故アシュトーリアさんの命を狙ったのか。

恐らく、彼女に対する復讐心があったからだろう。

アシュトーリアさんが首領に就任したときも、サナリ派の連中はうるさく口を出してきたと聞いている。

それどころか、かなり過激なことをしてまで…アシュトーリアさんに嫌がらせを仕掛けていたらしい。

従ってアシュトーリアさんは、組織をまとめる為…サナリ派に対して、暴力に暴力で応えるようなこともしたらしい。

早い話が、サナリ派の過激な連中に粛清を加えたらしい。

サナリ派は、そのときの恨みを忘れていない。

いつかこの女に復讐してやる、『青薔薇連合会』首領の座を取り戻してやる…と、牙を研ぎ続け。

今こうして、実行に移したのだ。

「この度のことは…とても『不幸な事件』でしたね」

サナリ派の当主、『ブルーローズ・ユニオン』のリーダー。

名を、セルテリシア・リバニー。

まだ若い少女とも呼べるべきその女は、いけしゃあしゃあとそう言ってのけた。

…「不幸な事件」だと?

お前達が企んだことだろうに。よくもまぁ。

セルテリシアにとって、先々代首領サナリは大叔父に当たる。

つまりセルテリシアは、サナリの従姪孫(じゅうてつそん)なのだが…。

こんな呼称、滅多に使うものじゃないよな。

もう他人で良いんじゃないか?

「っ、よくも白々しいことを…!あなた達の仕業なんでしょう!」

シュノさんが、傲岸不遜なセルテリシアに食って掛かった。

そう言いたい気持ちはよく分かる。よくぞ言ってくれた。

しかし…。

「何のことです?」

「アシュトーリアさんを襲ったのはあなた達なんでしょう…!?」

「まさか。…人聞きの悪いことを言わないでください」

あくまで、セルテリシアはしらばっくれて見せた。

…まぁ、当たり前だが。

「はい私達がやりました」なんて、あっさり認めるはずがない。

「この件について、私達は一切感知していません」

…だ、そうですよ。

厚顔無恥を人間にしたら、こんな顔になるんだろうなぁって。

「っ…!白々しいことを…!」

「そうだそうだ!おめーらだろこの馬鹿。しらじらばっくれてんじゃねーぞ!」

シュノさんに加えて、アリューシャも激高している。

白々しいとしらばっくれるが合体して、「しらじらばっくれる」。

言いたいことは分かる。

が、セルテリシアも、その隣にいる側近二人も、そんな必死な二人の幹部を鼻で笑っていた。

何を馬鹿なことを、とでも思ってるんだろう。

「アリューシャお前、変なことを言うんじゃねぇ」

「あぁん!?アリューシャがいつ変なことを言ったよ!?」

ルルシーが諌めるも、自分の言葉の間違いに全く気づいていないアリューシャであった。

うん、まぁそれは良いんだけど…。

すると。

セルテリシアの側近(男)が、シュノさんとアリューシャを見てこう言った。

「『青薔薇連合会』古参の幹部ともあろう者が、この程度の知性しかないとは…」

…。

…あぁん?

「アシュトーリア・ヴァルレンシーも、人を見る目がないな、そう思うだろう?ミミニア」

「よしなさい、エペル。貧民街上がりの幹部に知性を求めるのが間違いというものよ」

エペルと呼ばれた側近(男)と、もう一人、ミミニアと呼ばれた側近(女)が続けてそう言った。

…成程。

こいつらは、喧嘩をしにここにやって来た訳だな?
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