The previous night of the world revolution~P.D.~
こいつらが喧嘩をしたいと言うなら、受けて立つというものだ。

売られた喧嘩は高く買え、が俺の信条なんでね。

「んだと、コラ…!アリューシャのゴキブリ精神舐めてんのか!?」

アリューシャはゴキブリじゃないと思いますけど。

しかし、相手もマフィアだからな。

アリューシャがいくら凄んでも、セルテリシアの側近二人はせせら笑うだけ。

「アリューシャ、シュノも。少し静かにしてね」

アイズは口元に人差し指を立てて、二人にそう指示した。

口調は穏やかだったが、得も言われぬ圧を感じた。

…今下手に発言したら、サナリ派の代表と揉めることになる。

アイズとしても苦しいところなのだろう。

アリューシャもシュノも、そんなアイズのプレッシャーを察したらしい。

ぎゅっと口を噤んで、こくりと頷いた。

帝国騎士団相手でも余裕ぶっかましてたのに、まさか身内相手でこんなに緊張するとはな。

本当の敵は味方って奴だな。悲しいことに。

同じ組織の仲間なんだから、仲良くすれば良いのになーって。

俺は平和主義ですからね。そう思うんですよ。

「…それで?今日はまたどうしたの?『ブルーローズ・ユニオン』のお偉方が揃って」

と、アイズは厳しい顔つきでセルテリシアに尋ねた。

「分かりきったことを。アシュトーリア様のことです」

「彼女が何だと?」

「死にかけているそうじゃないですか。…とても悲しいですね」

「…」

悲しいって言うんなら、悲しそうな顔をして言えよ。

凄い嬉しそうに言ってるからな、これ。

人の不幸は蜜の味ってか?

その気持ちはよく分かるが、自分の身内に関わることなら心穏やかではいられないな。

「きっともう…長くないでしょう?」

「不吉な予測をするのはやめてもらいたい」

「気持ちは分かりますよ。あなたはアシュトーリア様の一番の腹心だそうですから。だけど、現実を受け止める覚悟も必要ではなくて?」

「…」

ムカつく女だな。

喋り方がなんかムカつく。

シェルドニア王国の、頭縦ロールお嬢様(笑)を彷彿とさせる。

「例え一命を取り留めても、後遺症が残らないとも限りません。『青薔薇連合会』首領の座を他者に譲る…良い機会だと思いますけど」

だからって、何故そこでお前が出しゃばってくるのか。

次期首領はアイズだと知らないのか。

「…そう。確かにそうかもしれないね…。けど、代替わりして次の首領になるのは、この私だよ」

アイズはきっぱりと、セルテリシアに向かってそう言った。

うーん。よく言った、アイズ。

それでこそですよ。

栄光ある王冠を、火事場泥棒さながらに横から掠め取っていこうとする輩など、往復ビンタして追い返してしまえ。

ましてや、この「火事」は他でもない、こいつらが起こしたものなのだから。

これ以上振り回されるなんて、全く冗談ではない。
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