The previous night of the world revolution~P.D.~
――――――…その頃。

サナリ派『ブルーローズ・ユニオン』本部では。





「実に不愉快な連中だったな。所詮はアシュトーリア・ヴァルレンシーの手先だ」

「ヴァルレンシー派に期待するのが、そもそもの間違いというものよ」

…私のボディーガード、兼側近のエペルとミミニアは、不満げな顔でそう言い合った。

「アシュトーリア・ヴァルレンシーを仕留め残ったのが失敗だったのよ。あの女を仕留めきれていれば、もっと話は早かったものを…」

「それは仕方ないだろう。捕まるのを恐れて、確実に息の根を止めずに逃げ出した襲撃班の責任だ」

「分かってるわ。過ぎたことを言っても仕方ない…。次の策を立てなくては」

…私は、二人の側近達が口々に言い合うのを黙って聞いていた。

暗殺の失敗…。次の『青薔薇連合会』首領…。

サナリ派の台頭。正しい血筋の後継者。

いつもいつも、二人の話を聞いていると頭が痛くなってくる。

「…あの、エペル。ミミニア」

私は恐る恐る、二人の間に割って入った。

どうしても不安で仕方なかったから。

「どうされましたか、セルテリシア様」

「私…あれで、本当に良かったの?」

あれで、とは…先程『青薔薇連合会』本部に行ったときのことだ。

アシュトーリア・ヴァルレンシーさんから次期首領として指名されている幹部…アイズレンシア・ルーレヴァンツァさんに対して。

私は、彼に真っ向から対立するようなことを言ってしまった。

あんな言い方をしたら、アイズレンシアさんは私を敵視して当然だ。

今頃彼らは、私達サナリ派とどう対抗するか考えているはずだ…。

これでもう、対話の道は閉ざされたと言っても過言ではなかろう。

それなのに。

「勿論です、セルテリシア様。ご立派でしたよ」

エペルは微笑んで、私にそう言った。

そう…。…そっか。

「とても威厳のあるお言葉でした。亡くなられたサナリ様も、セルテリシア様を誇りに思っていらっしゃるはずです」

「…ありがとう」

…そうだと良いけど。

大叔父様の考えなんて、私には分からない。

むしろ、とても不安なのだ。

大叔父様は、血の繋がった私ではなく…真に次期首領として優秀なアイズレンシアさんに、首領になって欲しいと思ってるんじゃないかって。
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