The previous night of the world revolution7~P.D.~
ルヴィアもまた、シュノと同じく激しく動揺していた。

でなければ、幹部であるシュノ相手に大声を上げるなんてことは出来ないだろう。

しかし、ルヴィアを責めるのは間違っている。

決して誰も責められるべきではない。

ルヴィアも、シュノも…。…そして、ルレイア達も。

彼らはただ、私という沈みかけた船を捨てて、新たな船に乗り換えただけなのだから。

それの何が悪い?

沈みゆく泥舟と運命を共にするのではなく、泥舟を蹴り捨ててでも別の船に乗り換える。

彼らにはその自由がある。彼らはただ選択しただけだ。

自分達が正しいと思う道を。

「…嘘。嘘…嘘よ…」

シュノは何度もそう呟きながら、その場にぺたんと座り込んだ。

みるみるうちに、シュノの目に涙が滲んだ。

「ルレイアが、そんな…。私の前からいなくなるなんて…」

「…」

「アシュトーリアさんがあの状態で…ルレイアまでいなくなって…。私は一人ぼっちだわ。これから私は、どうしたら良いの…?」

…そうだね。

どうしたら良いんだろう。私にも分からないや。

全てを諦めて、運命の神様の御手に任せる…というのもアリかもしれないな。

なんて考えてしまうのだから、私も酷く動揺しているのだろう。

それも当然だろう?

信頼していた仲間に、こうもあっさり裏切られたのだから。

「…そっか。ルル公もルレ公もルー公も、揃ってあの生意気な女のとこに行ったのか」

ずっと沈黙していたアリューシャが口を開いた。

生意気な女…セルテリシア・リバニーのことかな。 

サナリ派筆頭組織、『ブルーローズ・ユニオン』の代表。

私と『青薔薇連合会』首領の座を巡って争っている、渦中の人。

「そっか…。まぁ、しょうがねぇよな…」

アリューシャは、予想以上に冷静だった。

少なくとも、シュノよりは遥かに冷静に事実を受け止めていた。

「ルレ公は多分、ルル公を選んだんだろ。所属する組織がどうのって言うより、ルル公と一緒にいたいんだろ」

「…」

「で、それと同じようにルー公も、ルレ公を選んだんだろ。そんだけの話だ」

…私もそう思う。

ルレイア達は、『青薔薇連合会』とか、『ブルーローズ・ユニオン』とか、どの組織に所属するかは関係なく。

彼らは組織ではなく、人を選んだのだ。

ルレイアはルルシーを、ルーチェスはルレイアを。

いかにも彼らの考えそうなことだ。

そして、そんな自分の感情に素直に従った彼らを、責めることは出来ない。

何処に所属し、誰と生き、何を選択しようとも…それは彼らの自由だから。

薄情者だとか、裏切り者だとか言うのは間違っている。

…むしろ、少しホッとしている自分がいる。

私に万が一のことがあって、本当にセルテリシアが『青薔薇連合会』の首領の座につくことになったとして。

その下にルレイアがいるなら、きっと彼が屋台骨となり、新生された『青薔薇連合会』を導いてくれるだろう。

そう思うと安心した。

彼らがいる限り、『青薔薇連合会』は安泰だ。

…寂しくないかと言われたら、それは寂しいけどね。

「ただ…ルレ公達を撃つのは、アリューシャやだなぁ…」

「…」

…そうだね。私も嫌だよ。

彼らも同じ風に思ってくれてると良いんだけど。

お互いマフィアの幹部の身で、容赦とか慈悲とか…期待するのが間違っているかもしれないね。
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