The previous night of the world revolution~P.D.~
何者かと思って振り向くと。

「…あなた、セルテリシアさんの側近の…」

「エペル・アマンディだ」

そんなフルネームだったんですね。

「エペル…さんですか。何の用です?」

「いや、『ブルーローズ・ユニオン』の新しい幹部様は、呑気に菓子を食べている暇があるのかと思ってな」

いやぁ刺々しい。

まるで俺達のことを信じてないってのが、ビシビシ伝わってきますね。

何でお前らがここにいるんだ、とか思ってそう。

恐らくエペルは、俺達を見張る為に様子を見に来たのだろう。

全く信頼されていない。

しかし、これはチャンスでもある。

エペルに媚びを売って、彼の信用を得るチャンスだ。

個人的には、こんな男と仲良くなるつもりは欠片もない。

が、これから先『ブルーローズ・ユニオン』で俺達の立場を確固たるものにする為に。

やはり、『ブルーローズ・ユニオン』で大きな覇権を握っているであろう、この男の信頼を得るに越したことはない。

すぐには信用を得られなくても、少なくとも俺達は無害だと信じてもらわなくては。

「丁度良かったです、エペルさん。あなたも試食してみてくれませんか?」

俺は、見る者を虜にする営業スマイルを浮かべた。

新参者ですからね。先輩には下手に出ますよ。

あぁ、俺ってなんて良い大人。

しかし。

「冗談じゃない。何だそれは」

じろっ、とエペルはテーブルの上を睨んだ。

何だ、って…。

ムカッと来るけど仕方ない。

腹を立てず、丁寧に説明してあげますよ。

「俺は『ブラック・カフェ』というカフェを営んでるんですが、そのカフェのメニューは全て黒なんです。ほら、この通り」

俺はテーブルの上の、黒いミルクレープと黒いモンブランと、黒いゼリーを指差した。

「良い色でしょう?」

「…」

何で無言なんですか?

無言は肯定の意だな。そういうことにしよう。

「これらは、今度の期間限定メニューの候補なんです。この中から期間限定メニューを決めようと思うんですが、是非試食してみてくれませんか」

「…」

「あなたの意見も参考にしたいんですよ。どうぞ、是非」

俺がこんなにも丁寧に、下手に出て、素晴らしい営業スマイルを浮かべているというのに。

セルテリシアの側近エペルは、小馬鹿にしたように鼻で笑った。

「『青薔薇連合会』の幹部様は、そんな下らない店を営業して稼いでるのか。世も末だな」

…あ?

咄嗟に殺意を覚えたが、何とか自制した俺、偉い。
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