The previous night of the world revolution~P.D.~
何だこいつ。

限らかに俺に喧嘩売ってるよな?

売られた喧嘩は買うのが信条だが…。

「まぁ、新参幹部の浅知恵ってところか。別にお前達が何をして儲けようと、『ブルーローズ・ユニオン』に害がないなら構わないが…」

何で偉そうなんだ。

「『ブルーローズ・ユニオン』の名を汚す行為をしたら、絶対に許さないからな」

許さなかったら俺をどうするって?闇討ちでもするつもりか。

アシュトーリアさんにそうしたように?

笑わせてくれる。
 
「…今年オープンしたばかりの店ですが、これでも毎日行列の出来る人気のお店なんですよ」

俺は努めて笑顔を作って、穏やかにそう言った。

偉い。偉いですよ俺。

こんなポンコツ野郎相手でも、ブチギレずに我慢してるなんて。

それなのに、エペルは心底軽蔑したような顔で。

「下らない」

と、吐き捨てた。

ミルクレープの皿を、エペルの顔面にぶん投げてやりたかった。

俺がそれをしなかったら、かろうじてまだ理性が働いていたからでもあるが…。

ミルクレープが勿体無いからでもあった。

食べ物を無駄にするのは良くないと思うんですよ。やっぱり。

「…」

俺は両手を後ろに回して、きつく拳を握り締めた。

我慢だ、我慢しろ俺。

最高にムカついてるけど、今ここでエペルと喧嘩をするのは不味い。

エペルの信用を得るどころか、余計拗らせてしまう。

ここは俺が大人になって、努めて冷静に対処しよう。

そう、こいつはガキだ。それどころかまだ人類の域にも達してない。猿だ、猿。

猿相手にブチギレるなんて、大人気ないだろう?

そう思おう。

心の中で暗示をかけ、そして深呼吸を一つ。

よし。

「そうですか。今度エペルさんもお店に招待しますね」

「結構だ」

うるせぇ。黙って聞いてろ。

「あ、そうだエペルさん。今夜、時間はありますか?」

と、俺はにこやかに尋ねた。

「今夜?何故?」

「いえ、エペルさんと、それからミミニアさんも誘って…一緒にカラオケでもどうかと思いまして」

仲良くなるには、カラオケが一番。

こんな連中と一緒にカラオケなんて、本当は全く気が進まない。

が、エペルとミミニア両名の信用を得るには、嫌でもこの二人との時間をもっと増やさなければならない。

「ルレイアは無害だ。信用に値する」と思ってもらわなければならないのだ。

疑われたままの状態では、どうにも居心地が悪いからな。

針のむしろって言うか、常にピリピリした視線を感じ続けている。

それに、部屋の中を盗撮盗聴されるのも、気分の良いものではないからな。

早いところ警戒を取って欲しい。

それ故、カラオケに誘ってみた次第である。
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