The previous night of the world revolution7~P.D.~
あー、さてはこいつ、音痴だな?

自分の音痴がバレるのが恥ずかしいから、カラオケなんて幹部に相応しくない〜とか言ってんのな?

それはどうも失礼。

仲間内でならともかく、親の仇とばかりに憎んでいる俺達に、音痴な歌声を聞かれるのは屈辱でしょう。

可哀想だから、黙っててあげますよ。

「分かりました。じゃあエペルさんが行きたいところにしましょう。何処にします?」

俺は再び笑顔を浮かべて、エペルにそう尋ねた。

『ブルーローズ・ユニオン』の幹部に相応しい場所、ってのは何処なんだ?

是非とも教えてもらいたいものだ。

如何せん俺達は、貧民街上がりの安っぽい幹部の考えが染み付いてるもので。

しかし。

「如何なる理由があろうとも、お前達と一緒に出掛けることはない」

と、一刀両断。

「何故ですか?」

そんな暇もないくらい忙しい…って訳じゃないだろう。

信頼の置けない同僚と交友を深めるのも、立派な仕事の一つだと思いますけどね。

少なくとも、俺の方は死活問題だからな。早いところエペル達の信頼を得ておきたい。

それなのに。

「何を勘違いしてるのか知らないが、俺はお前達と仲良しこよしする気はない」

相手にその気がないのなら、いくら俺が仲良くしようと色々企画しても、意味がない。

「お前とは絶対仲良くしないからな!」って、お前幼稚園児か?

幼稚園児でももうちょっと柔軟な考えしてますよ。

「別にお友達になろうって言ってるんじゃないですよ」

俺は静かに微笑みながらそう言った。

エペルの度重なる失礼な言葉の数々に、俺がいつブチギレるものかと、ルルシーが内心ハラハラしているのが分かる。

大丈夫ですよ、ルルシー。

あと30秒くらいなら我慢出来ますから。

「まだ『ブルーローズ・ユニオン』に来たばかりですけど、どうにもあなたと…もう一人のミミニアさんという方にも、信用されていないようなので」

「…」

「信頼されないのは心外ですし、気分も悪いです。あなたもそうでしょう?信頼出来ない相手が味方では、安心して背中を預けられませんからね」

あくまで、このままでは「お互いにとって良くない」とアピールしていく。

本当は、エペル達に信用してもらえないと俺が一方的に困るだけだ。

何事があっても、俺がエペルやミミニアや、セルテリシアを信じることはないし。

ましてや仲良しのお友達なんて、望むべくもない。

が、『ブルーローズ・ユニオン』で俺とルルシーとルーチェスが自由に動く為には、彼らからの信用は必要不可欠だ。

その為なら、いくら失礼なことを言われても我慢して食いつきますよ。

…我慢…そろそろ限界なんですけどね。

「いつまでもお互い睨み合ってる状態では、余計不信感を生むだけです。そんなギスギスした空気は、組織にとっても良くないのでは?」

「…」

「歩み寄らないと、手は取り合えませんよ。仲良くしようとまでは言いませんから、俺達を信用する努力をして欲しいんです」

さぁ、これならどうだ。

少しは絆されたか?

これでも、俺としては相当譲歩してますからね。

俺がこんなに下手に出るなんて、まず滅多にないことですよ。 

やれば出来るってところを証明しちゃいましたね。俺って偉い。
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