The previous night of the world revolution~P.D.~
私達にとって、恐らくもっとも良いニュース。

それは、アシュトーリアさんの回復だった。

ルレイア達が『ブルーローズ・ユニオン』に寝返った、その翌日のことだった。

何かの因縁を感じたのか、寝ている場合ではないと思い立ったのか…。

アシュトーリアさんは意識を取り戻し、それから順調に回復の兆しを見せた。

今ではこうして、『青薔薇連合会』本部の自室のベッドで治療に専念している。

病院とほとんど変わらない設備と、熟練の医療スタッフを揃えてある。

あまりに長く病院にいたら、またサナリ派の連中に狙われる可能性があるからな。

ここにいれば安心だ。

大変な目に遭ったアシュトーリアさんに、事の経緯を説明するのは気が引けたものだ。

ましてやルレイア達が、フリだけとはいえサナリ派に寝返ったなどと、アシュトーリアさんには言いたくなかった。

が、言わない訳にはいかなかった。
 
アシュトーリアさんがある程度回復したタイミングを見計らって、私はまたしても言葉を選びつつ、アシュトーリアさんに説明した。

彼女は、ベッドの上に寝ている間にある程度予測していたのだろう。

私の報告に驚くことなく、静かに頷いただけだった。

そして、「辛い選択をさせてしまってごめんなさいね」と、私に謝りもした。

アシュトーリアさんが謝るようなことは、何一つない。

誰が悪い訳でもない。

サナリ派の…セルテリシアだって、自分に出来る精一杯のことをしたのだ。

だから、アシュトーリアさんを傷つけられたのは別にして、私はセルテリシアを責める気にはなれなかった。

私から報告を聞いたアシュトーリアさんは、そのときにきっぱりと言った。

「サナリ派に首領の座を譲ることはしない」と。

つまり、徹底抗戦の構えを見せるということだ。

この力強い言葉に、私達は安心した。

基本的に『青薔薇連合会』には、血気盛んな血の気の多い連中が揃ってるからね。

戦うのが怖いから膝を屈する、なんて言ったら、組織中から弱腰と詰られていただろう。

しかし、当然アシュトーリアさんは、サナリ派に膝を屈することはないと言った。

これで、私達の取るべき行動指針がはっきりした。

まぁ、徹底抗戦を選ぶことが出来たのは、ルレイア達が本当に裏切った訳じゃないと分かってるから、という理由もあるのだろう。

本気でルレイア、ルルシー、ルーチェスの三人を相手にするとなれば。

さすがのアシュトーリアさんも、もう少し慎重策を考えていただろう。

人数にすればたった三人だけど、あの三人は、一人だけで一個大隊に値する実力があるからね。

正面切ってぶつかれば、あっという間にルレイアの鎌の錆びにされてしまうだろう。

くわばらくわばら。
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