The previous night of the world revolution~P.D.~
「ルリシヤ…」

「アシュトーリアさんの言う通り、『青薔薇連合会』は実力主義の組織だ。そして、『青薔薇連合会』にはアイズ先輩に限らず、貧民街や社会の底辺に生まれ育った者は多い」

むしろ、ルレイアやルリシヤやルーチェスみたいな生まれは、本当にレアケースだもんね。

『青薔薇連合会』は、日の当たらない場所に生まれ、社会から排除された者の集まりだ。

そこでは、どのような生まれであるかは関係ない。

ただ実力だけが物を言う。どれほど正しい生まれだろうが、実力がなければ排除される。

そういう世界だ。

「実力主義の『青薔薇連合会』で、貧民街出身のアイズ先輩が、ただ純粋に実力を認められて次期首領の座を賜った…。その姿を見て励まされている者もいるんだ」

「…」

「どれほど優れた功績を上げようが、それが正しく評価されない組織に未来はないぞ」

…そうだね。

君が言うと、言葉の重みが違うね。

高貴な生まれであるとか、賤しい生まれであるとかは関係ない。

優れた働きをした以上、それなりの評価がされなくては。

自分がどれほど功績を上げても、「あなたは貧民街の生まれだから評価出来ません」と言われ。

自分より全然活躍していないのに、上流家庭出身というだけで、別の者が評価されているのを見たら。

誰だって、「もう二度と頑張ってやるものか」と思うだろう?

そういうことなのだろう。ルリシヤが言っているのは。

「セルテリシアが首領になって喜ぶ者はいるだろうが、アイズ先輩が首領になって喜ぶ者も大勢いるんだって忘れちゃ駄目だぞ」

「…ルリシヤ…」

「ついでに、俺もその一人だ」

私は思わず、ふっと微笑んでしまった。

君ほどの実力の持ち主に、そう言われてしまうとは。

「ありがとう。ルリシヤ」

「どういたしまして」

「アシュトーリアさんも。ありがとうございます」

「良いのよ、アイズ。胸を張りなさい、あなたは立派な、『青薔薇連合会』の首領になれるわ」

身に余る光栄だな。

少し自信が出た。

サナリ派が何を叫び、何を画策しようとも…。

私はアシュトーリアさんに選ばれた、『青薔薇連合会』次期首領として胸を張り続けるだけだ。

「それに、心配しなくても大丈夫よ、アイズ」

と、アシュトーリアさんが言った。

「大丈夫、とは?」

「だって、『ブルーローズ・ユニオン』には今、ルレイア達がいるんでしょう?」

あぁ、成程。 

「セルテリシアのことは、彼らが何とかしてくれるわ。あの子達ならきっと、素晴らしい働きをしてくれるはずよ」

「…えぇ、その通りです」

私はただ、堂々と構えていれば良い。

誰に責められる謂われもない。私はアシュトーリアさんに選ばれた、名実共に「正統な」『青薔薇連合会』の次期首領なのだ。

ならば私は、自分に出来ることをするまでだ。

今も『ブルーローズ・ユニオン』で、危険を犯して潜入してくれている、ルレイア達の為に。

そして、アシュトーリアさん以下、私を信じてついてきてくれる皆の為にも。

私が、挫ける訳にはいかないね。
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