The previous night of the world revolution~P.D.~
「謂われなく、ただ怪しいからという理由で人を疑ってはいけません…。彼らは仲間である幹部を手にかけてまで、『ブルーローズ・ユニオン』に来てくれたのですから」

ルリシヤのことか?

彼なら今頃、多分ピンピンしていると思いますよ。

元気なのがバレたら困るから、姿を隠しているようですが。

「それに、彼らには『青薔薇連合会』を見限って、『ブルーローズ・ユニオン』に寝返る見返りもあります。強力な味方になってくれるはずです」

本気で俺とルルシーとルーチェスの三名が裏切ったなら、それはもう頼もしい味方だったでしょうね。

だが残念ながら、今回はセルテリシアが浅慮だったと言わざるを得ない。

「味方など…。ヴァルレンシー派に所属していた者が、サナリ派の味方になるなど、業腹にも程があります」

悪かったですね。

貴様は何様のつもりだ?さっきから偉そうに。

押し倒すぞ。

「この三名を『ブルーローズ・ユニオン』に勧誘した理由について、セルテリシア様にご説明頂きたい」

「で、ですからそれは…。彼らが味方になってくれたら、とても頼もしいですから…。ルレイアさん達の活躍については、皆さんも耳にしているでしょう?」

「…小耳に挟んだ程度ですけどね」

小耳に挟んだ、だと?

大耳に挟め。俺の活躍だぞ?

今まで、どれほど『青薔薇連合会』の為に粉骨砕身してきたことか。

それでも、「大したことはしていない」と思われていたのか?

サナリ派の連中は、セルテリシアを含めてアホばっかだな。

「偉大なサナリ・リバニーの栄光(笑)」とか、「幹部に相応しい血筋(笑)」とか、下らないプライドばっか頭に詰め込んで。

もっと大事なことがあるだろうがよ。馬鹿じゃないのか。

「いずれにしても、『青薔薇連合会』の幹部であるなら、大したことはしていません」

やっぱりぶん殴ってやろうか。

貴様はさぞや、立派な功績を上げたんだろうなぁ?

「サナリ派に寝返るとしても、何故いきなり幹部なのです」

「そ、それは…。お三方共、幹部に相応しい実力をお持ちですから…」

「いくら『青薔薇連合会』で幹部をしていたとしても、『ブルーローズ・ユニオン』では新参者ではありませんか。使い走りから始めるのが筋というものです」

「…」

使い走りって。『青薔薇連合会』の幹部を使い走りって。

前々から思っていたけど。

『ブルーローズ・ユニオン』は本人の実力より、生まれの貴賤が物を言うんですね。

正しい働きが正しく評価されない。

いくら実力があろうとも、生まれが賤しいならば功績のうちに入らない。

最低な組織ですよ。

『青薔薇連合会』であれば、王族だろうが貧民街上がりだろうが、実力があればすぐに幹部に任命されるのに。

大元は同じ組織なのに、えらい違いだ。

「今すぐ、この三人を幹部の座を辞させ、一般構成員の身分からやり直させるべきです」

生意気な女幹部がそう言うと、他の幹部も、その通りとばかりに深々と頷いていた。

成程、馬鹿ばっかだな。

「そ、それは…」

困ったような顔で、返答に詰まるセルテリシア。 

おいおい、しっかりしてくださいよ。

このままじゃ勢いに流されて、「分かりました。じゃあそれで」と言われかねない。

冗談じゃないですよ、それは。

仕方ない。ここは俺流の「助け舟」を出しましょうか。

「…ぷっ。随分必死ですね、古参幹部様は」

俺は、そう言って女幹部共を鼻で笑ってやった。
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