The previous night of the world revolution~P.D.~
「…何だと?」

おー。怖い怖い。怖いでちゅねー。

「要するに、自分に自信がないんでしょう?これまで七光りの幹部だったから」

『ブルーローズ・ユニオン』の幹部は、基本的に世襲制だ。

親が幹部だったら、その子も幹部になる。

恐らくこの女幹部も、親から引き継いだのだろう。

実力主義の『青薔薇連合会』だったら、絶対に有り得ないことだな。

「実力で勝負したら、あなたに勝ち目はありませんもんね。俺達が幹部として取り立てたら、自分の無能がバレる。だから必死に俺達を蹴落とそうとしてるんでしょう」
 
「…!何だと、貴様…!」

おっ?図星を突かれてブチギレたか?

いやぁ可哀想ですね、無能は。

「七光りの幹部は大変ですね。自分の実力不足を補う為に、血筋にしがみつくしかないとは。誇れるものはパパとママのお名前だけでちゅか?」

隣に座っているルルシーが、「やれやれ…」みたいな顔をしているくらいには。

散々煽ってやると、女幹部は顔を真っ赤にしていた。

おーおー。効果覿面じゃないですか。

ってことは、一応自覚はあったんだろうか?

親の七光りがなければ、自分など幹部に全く相応しくない人物だと。

「言わせておけば、貴様…!」

女幹部は椅子から立ち上がって、拳銃に手を伸ばした。

お?やるか?

良いでしょう、受けて立つ。

「ほう、俺に勝てるつもりですか。無能な幹部様が」

「我らを侮辱した罪、贖わせてやる!」

「そんなへっぴり腰で?やれるものならやって…」

と、言いかけたとき。

「やめてください」

セルテリシアが、ようやく俺達の間に仲裁に入った。

遅いですよ。何の為に芝居を打ったと思ってるんです。

「仲間同士で争ってはいけません。両者共、矛を収めてください」

俺はまだ矛を見せてはいませんけどね。

この女幹部が一方的に、拳銃向けてきたってだけで。

「ですがセルテリシア様!この男は、我々『ブルーローズ・ユニオン』の幹部を侮辱して…!」

女幹部は食い下がって、セルテリシアに訴えた。

しつこい女は嫌われるぞ。

「彼も『ブルーローズ・ユニオン』の幹部です。仲間内で争っているときではないはずです」

「…ですが…!」

「矛を収めてください。私の前で喧嘩をするつもりですか?」

「…っ」

セルテリシアに再度叱られ、女幹部はようやく拳銃をホルスターに戻した。

しかし、弾丸の代わりとばかりに、俺を憎々しげに睨むことは忘れなかった。

やれやれ。

真っ赤な顔して。鏡持ってきて本人に見せてやりたい。

「ルレイアさんも、不用意に挑発するような言動は控えてください」

と、セルテリシア。

「はいはい、分かりましたよ」

言っとくけど、俺だって好きで喧嘩売った訳じゃないからな。

セルテリシアが批難の的にされていたから、話の流れを変える為に道化を演じただけだ。

俺ってなんて良い人。セルテリシアは俺に感謝をするべきだな。
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