The previous night of the world revolution~P.D.~
とりあえず、開幕から紛糾しそうになっていた幹部会議は、落ち着きを取り戻した。

かなり強引な落ち着きの取り戻し方でしたけど。

細かいことは気にするな。

「仲間内で争うのはやめましょう。私達は共に、一致団結して互いに協力し合わなければならないのですから」

だってよ、女幹部。

こんな奴らと協力し合うなんて冗談じゃない、って顔に書いてある。

しかし、セルテリシアが言い出した手前、「協力なんて無理です!」とも言えないらしい。

腰抜けめ。

「…確かに、内輪揉めを起こしている場合ではないようです」

セルテリシアの横に座っていた、側近(女)のミミニアが言った。

摂政様が出しゃばってきたぞ。いつも通り。

「どういう意味ですか、ミミニア…」

「まだ未確定情報ですが、アシュトーリア・ヴァルレンシーが『青薔薇連合会』に戻ったという情報が入ってきました」

これには、俺もルルシーもルーチェスも、目を見開かずにはいられなかった。

え、マジで?

アシュトーリアさん、『青薔薇連合会』に戻ったのか?

ってことは、身体の方は回復したのか。

それは何よりの朗報じゃないか。

「そうですか…アシュトーリアさんが…」

「これで、暗殺は完全に失敗したことになりますね」

一命を取り留めてしまったからな。

俺達にとっては、心底安心する朗報だったが。

しかし、『ブルーローズ・ユニオン』の幹部としては、喜んで良い状況ではない。

内心ガッツポーズをしたいところだったが、俺はその衝動をぐっと抑え。

むしろ、面倒なことになった…という顔をしなければならなかった。

怪しまれては困るからな。

「馬鹿に生命力の強い女ですね」

俺は呆れたような振りをして言った。

「伊達に『青薔薇連合会』の首領やってる訳じゃないってことですね」

すると、ルーチェスも俺に同意するようにそう言った。

言っとくけど、これらは褒め言葉なので。

「…」

ルルシーは何も言わなかったが、恐らく不用意な発言をして、アシュトーリアさんの回復を喜んでいるのがバレないようにとの配慮だろう。

賢明な判断ですよ。

ボロを出すくらいなら、黙ってた方がマシというものだ。

何も言わなかったが、しかし、不機嫌そうに顔をしかめるのは忘れていなかった。

よしよし。その調子ですよ、ルルシー。

喜ぶのは心の中だけにして、表向きは不機嫌アピールをしておきましょう。

「千載一遇のチャンスだったものを…。やり損なうとは…」

「全くだ。何故確実に仕留めなかったのか…」

他の幹部の皆さんも、不機嫌顔であった。

そんな中、セルテリシアだけは俯いていた。

恐らくセルテリシアも、俺達と同じなのだろう。

内心では、アシュトーリアさんが無事に戻ってきたことを喜んでいるはずだ。

自分が『青薔薇連合会』の首領にならずに済んだ、と。
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