The previous night of the world revolution~P.D.~
「それじゃ…その、どうするんですか?」

おどおどと尋ねるセルテリシア。

人に聞くな。自分で考えろよ。

それを自分で決められないから、七光り幹部共がこんなに調子に乗るのだ。

すると。

「…どうするべきだと思う、あんたは」

いかにも厭味ったらしく、慇懃無礼な敬語で。

エペルが、俺に向かってそう言った。

…お?

「…何です」

「七光りじゃない幹部様なら、何か良い案が浮かぶかと思ってな」

俺に嫌味を言うとは。偉くなったもんだ。

「それに、『青薔薇連合会』は古巣だろう。アシュトーリア・ヴァルレンシーの弱点も知ってるんじゃないのか?」

「あの人に弱点があるとは思いませんけどね」

少なくとも、お宅らのリーダーに比べたらな。

しかし、エペルには通用しない。

「ふん。あれだけ偉そうな口を叩いておいて、妙案の一つもないのか?」

ムカッ。

仲間内で争ってる場合じゃないって、今お前のご主人様が言ってただろうが。

思いっきり喧嘩売ってきやがる。

まぁ良い。

それなら、俺もやり返してやるだけだ。

「そちらこそ。七光り幹部様は、馬鹿にしている新参者に意見を求めないと、自分達では決めることすら出来ないんですか?」

俺が小馬鹿にしたようにそう言うと、エペルは物凄い形相で目を吊り上げた。

俺は悪くないぞ。先に喧嘩売ってきたのは向こうだからな。

え?エペルとミミニアの信用を得るんじゃなかったのかって?

俺は悪くないぞ。先に喧嘩売ってきたのは向こうだからな。

俺はこんなに善良な良い子なのに、向こうがブッチしてきたんだから。

…まぁ良い。

これ以上は、またセルテリシアに叱られるかもしれないし。

「…ですが、敢えて意見するとすれば」

そうだな。

俺が本気で『ブルーローズ・ユニオン』に寝返ったとして、この状況で次にやることは…。

…国外逃亡だな。

俺だったらそうする。

だって、暗殺は失敗に終わった。遠からず、暗殺事件の犯人が自分達であるとバレる。

こうなっては、もう下手な弁解は無意味。

三十六計逃げるに如かずだ。

一旦『青薔薇連合会』の手の届かないところまで逃げて、そこで態勢を整える。

『青薔薇連合会』側だって、今頃盤石の守りを固めているだろう。

ここで焦って攻勢に出ても、返り討ちにされるのが関の山。

向こうが最大限に警戒してるって分かってるのに、わざわざ敵陣の真ん中に飛び込むなど。

愚策中の愚策、に決まっている。

…しかし。

悪いが、俺は『ブルーローズ・ユニオン』の幹部ではなく、『青薔薇連合会』の幹部だからな。

『ブルーローズ・ユニオン』が自ら危険に飛び込もうとするなら、その背中を押すのが俺の役目。

こいつらの無知と無能を、最大限に利用させてもらうぞ。

「もう一度暗殺したらどうですか?こんどこそ、確実に」

俺は敢えて、愚策中の愚策、を口にした。
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