The previous night of the world revolution~P.D.~
「アイズレンシア…だと…?」

「『青薔薇連合会』の次期首領を…?」

それは考えていなかった、って顔だな。

考えろ。

「当然、アシュトーリアさんは数多くの護衛に堅く守られているでしょう。警戒もされているはずです。その状態で、彼女を暗殺することは不可能に近い」

と、俺は説明した。

いかにももっともらしく、それっぽい理屈をくっつけて。

横でルーチェスが半笑いだったけど、俺は気にしない振りをした。

笑わないでくださいよ、ルーチェス。俺まで噴き出しそうになるじゃないですか。

「しかし、次期首領のアイズレンシアさんなら?彼なら警戒は薄いでしょうし、まさか今度はアイズレンシアさんが襲われるとは、彼らも予想していないでしょう」

「…一理あるな」

ねぇよ。

笑いそうになるから、真剣な顔で頷くんじゃねぇ。

言っときますけど、アイズはそんなに馬鹿じゃないですからね。

俺より頭良いんじゃないかってくらいなのに。

こいつらにとっては、アイズは所詮、貧民街上がりの賤しい幹部でしかない。

自分達より遥かに頭が回るんだってことを理解してない。

お前らの方がよっぽど馬鹿なのにな。

馬鹿は自分が馬鹿だってことが分からないんだろう。だって馬鹿だから。

それが分かるなら馬鹿じゃないってね。

「それに、アシュトーリアさんだって全快にはまだ程遠いはず。可愛がっている秘蔵っ子が死ねば、精神的に大きなダメージを受けるでしょう」

「…ふむ…」

ふむじゃねぇよ。偉そうに。

「実行に移す理由は充分だと思いますけど、如何ですか?」

俺はセルテリシアに…と言うより、エペルとミミニアに向かって尋ねた。

実権を握っているのはこの二人だからな。

「…」

エペルとミミニアには、互いに顔を見合わせ。

そして、決断した。

「…分かった。良いだろう」

良いだろう(笑)。

えっらそー…に。人様から知恵を借りておいて。

いかにも自分が思いつきました、みたいな顔でさ。

「だが…暗殺のタイミングはいつ?奴らは『青薔薇連合会』本部に引きこもって、外に出ることはめっきり減っていると報告を受けているが」

アホめ。少しは頭を働かせろ。

「外出のタイミングで強襲するのは、難しいでしょうね」

俺は出来るだけ、真面目な顔を装ってそう言った。

「それは一度、アシュトーリアさんのときに経験してますから。万が一外出するにしても、充分に対策してから出掛けるはずです」

一度使った手口は、もう通用しませんよ。

少なくともアイズにはね。

「なら、どうやって…。…毒物でも仕込むか?」

「それは回りくどいですね」

「だが、他にどうするんだ」

人に聞いてばかりいないで、少しは自分で考えてくれ。

全く困った奴らだ。

もっともっと、手っ取り早い方法があるだろう?

「相手が出てこないなら、こちらから迎えに行ってやれば良いんです」

「迎えに…?どういう意味だ」

言葉通りの意味だ。

「乗り込むんですよ、『青薔薇連合会』本部に」

ダイナミックで、いかにも面白そうな作戦だろう?
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