The previous night of the world revolution~P.D.~
「私はアイズレンシアさんのように、『青薔薇連合会』の首領に相応しくない…。それなのに、彼を殺してまで、自分がその座につこうとするなど…」

「…」

「相応しくない者が首領になることが…。それが、大叔父様の望んだことなのでしょうか?」

…さて。どうでしょうね。

それは、あなたの偉大な大叔父様に聞いてみないと分かりませんね。

「私に…その重荷を背負うことが出来るのでしょうか…」

ある意味でセルテリシアは、自分の身の程というものを弁えている。

少なくとも、自分に出来ないことを「出来る」と偽ってはいない。

出来ないことを出来ないと認めること。成長する為の大きな一歩ですね。

しかしセルテリシアには、そんな悠長に、亀の歩みのような成長をする暇はない。

彼女は今すぐにでも、『青薔薇連合会』の首領になることを望まれているのだから。

いかにセルテリシアが「普通の少女」であろうとしても、周りがそれを許してくれない。

従ってこの「普通の少女」は、「普通ではない少女」になることを強制されるのだ。

セルテリシアに欠けているのは、そこで「自分は上に立つ者には相応しくない。私に何も強制するな!」と周囲の期待を突っぱねる勇気と度胸だ。

丁度、僕が持っていたような勇気と度胸。

これがセルテリシアにあれば、僕達がサナリ派の台頭に頭を悩ませることはないなかったでしょうに。

なかなか上手く行かないもんですね、人生って。

「…僭越ながら、出来なくてもやるしかないと思います」

僕は出来るだけ優しい口調を心がけながら、セルテリシアを叱咤激励した。

「あなたは一人ではありません。その重荷を、一人で背負う必要はないんです」

「…ルーチェスさん…」

「僕達がついてます。どうかそれをお忘れなきよう」

そう言うと、セルテリシアは少し微笑んだ。

おっと。落ちたか。

「ありがとう、ルーチェスさん。とても心強いです」

こちらこそ、ありがとうございます。

さぁ、ここで一歩、踏み込んでみるかな。

「良かったら、セルテリシアさん。明日の暗殺計画…。あなたも同行しませんか?」

「え?」

「アイズ総長の息の根を止めてすぐ、『青薔薇連合会』内外に宣言するんです。あなたこそが、『青薔薇連合会』の次期首領に相応しい人物であると」

僕はいかにも、もっともらしくそう言ってみせた。

さぁ、どうですか?反応は。

「火事場泥棒じゃないですが、相手が混乱している間に乗っ取ってしまおうという腹です。向こうが対策を取る前に、あなたが乗り込んで素早く制圧してしまいましょう」

「…私が…。でも、私にそのような力は…」

「あなたが素早く『青薔薇連合会』を制圧すれば、無駄な流血を避けることが出来ます」

という、僕の言葉が決め手だった。

「…!」

やはり、この人は暴力が嫌いであるらしい。

本当にマフィアのリーダーなんだろうか。

「…分かりました。では、私も同行します」

「ありがとうございます。大丈夫ですよ、あなたに危険が及ばないよう、僕があなたの護衛を務めましょう」

「えぇ、宜しくお願いします」

良かった。これでミッションクリア。




…あなたが腑抜けで、とても助かりましたよ。
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