The previous night of the world revolution~P.D.~
「…何ですか?」

「この隠し通路は、ちゃんと『青薔薇連合会』本部に繋がってるんだろうな?」

あぁ、成程。

俺のことが信用出来ないから、俺が案内したこの通路が、本当に目的地に通じているのか心配なんだな。

まぁ、そりゃそうでしょうね。

もしかしたら、この隠し通路は『青薔薇連合会』ではなく。

帝国騎士団の隊舎や、帝国自警団の本部に繋がっている可能性もある訳で。

辿り着くや否や、両手に手錠を嵌められるかもしれないリスクを抱えているのだ。

それはそれは。心穏やかではいられませんよねー。

ざまぁ。

暗闇だから、半笑いでもバレないバレない。

声だけ真面目そうな口調で言えば良い。

「ちゃんと『青薔薇連合会』の本部に繋がってますよ」

「…本当だろうな?」

疑り深い女だ。

さっきから、この女が黙りこくっているのは。

万が一これが罠だったとき、来た道を引き返す為に、道を覚えようとしているからなのかもしれない。

覚えなくても、ほぼ直進ですよ。

「この地下通路はほぼ直進するだけなんですが、他にももっと複雑な地下通路があって、そちらは厳重に警備がついてます」

「…」

「この隠し通路は、俺の知る限り全く使われていないので。『青薔薇連合会』側も警戒はしていないと思いますよ」

もっともらしく言ってみせたが、これは嘘である。

この地下通路は、幹部しか知らない秘密の脱出口…などではない。

末端の構成員でさえ知っている、隠し通路とも言えない、ただの地下道だ。

おまけに、この地下道にはトラップが仕掛けられている。

漫画とかでよくある、針の道や落とし穴…という分かりやすいトラップじゃない。

このトラップは、侵入した者を捕える為のトラップではない。

侵入者が現れたことを、いち早く伝える為のトラップである。

暗闇に紛れていて分かりづらいが、地面や壁の至るところに、このトラップは仕掛けられている。

トラップを解除せずに進むと、『青薔薇連合会』本部に、この地下道に侵入者が現れたことが伝わる仕組みである。

ルルシー&エペル組が通っている道も、ルーチェス&セルテリシア組が通っている道も同様だ。

使われていないのは事実だ。あまりにも単純な地下道だから、逆に使用頻度は少ない。

それでも敢えて、俺はこの地下通路を使用することを選んだ。

何の為に、わざわざ見つかるような危険を犯してこんな道を通るのか?

その理由は簡単だ。

見つけて欲しいからですよ。俺達の侵入を、いち早く。

俺は敢えてトラップを解除せずに、馬鹿正直にミミニアを従えて、ここまで歩いてきた。

ルルシーやルーチェス達も、トラップを一切解除せず、敢えてトラップに引っ掛かりながら進んでいるはずだ。

今頃『青薔薇連合会』側に、俺達の侵入が伝わっていることだろう。

俺達の目的は、まさにそれなのだ。
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