The previous night of the world revolution~P.D.~
今回のアイズ暗殺計画。

エペルとミミニア、そしてセルテリシアの目的は、勿論アイズの殺害だ。

しかし俺とルレイアの目的は、あくまで時間稼ぎに過ぎない。

遅れて合流する予定のセルテリシアが、ルーチェスと共に『青薔薇連合会』本部内に侵入するまでの、時間稼ぎ。

セルテリシアを捕らえれば、それだけで形勢逆転だからな。

ここ『青薔薇連合会』で、セルテリシアを拘束し、側近達も無力化して、アシュトーリアさんとアイズの前に引っ立てる。

それが、俺達の目的だ。
 
だが、そんな俺達の目的を、アイズ達は当然知る由もない。

事前に意思疎通することは出来なかったからな。

だから、あくまでアイズには察してもらうしかないのだ。
 
ルレイアは「アイズなら大丈夫だ」と楽観視していたが。

俺は、本当に大丈夫だろうかと心配だった。
 
アイズの実力を疑っている訳じゃない。

ただ、アイズも人間だから。

仲間だったはずの俺達が敵に回って、『青薔薇連合会』に攻めてくる側になって。

さすがのアイズだって、冷静さを欠いて判断を誤ることだってあるだろう?

もしそうなったときの為に、第二のプラン、第三のプランを考えてはいたものの…。

…今のところ、その必要はなさそうだな。

さすがアイズだ。期待にはしっかり応えてくれる。

つくづく、セルテリシアは次期首領に相応しくないと確信した。

セルテリシアじゃ、アイズの足元にも及ばない。

アイズが期待に応えてくれるなら、俺も自分の役目を果たさないとな。

「ここだ」

俺はエペルを連れて、『青薔薇連合会』本部地下通路の突き当たりに辿り着いた。

「…?行き止まりか?」 

顔をしかめるエペル。

まさか。

俺は跪いて、壁の足元の泥を払った。

すると、その先に赤茶色のレンガが現れた。

レンガの一つを掴み、引き抜く。

「手伝ってくれ。この先が、本部地下の一室に繋がってる」

「…!」

ルレイアの使った地下通路の入り口は、確か鉄の扉だったはずだが。

この地下通路は、こうして泥とレンガでカモフラージュしてある。

レンガを取り除いても入り口は狭いので、猫のように這いつくばって通らなければならない。

少しでも時間稼ぎになるかと思ってな。

まぁ、ほんの数分にもならないけど。

あっという間にレンガは取り除かれて、俺は頭を屈めて、小さな入り口から侵入した。

エペルも同じようにして、俺の後をついてきた。

辿り着いたのは、『青薔薇連合会』本部地下にある一室。

「足元に気をつけろよ」

俺はエペルにそう言った。

ここはガラクタ部屋だ。足元には、割れたガラス瓶の破片や、新聞紙のような紙切れが散らばっていた。

…ルレイアから連絡が来ていたから、分かっていたが。

マシンガンの銃口に出迎えを受ける、なんてことにならなくて良かった。

アイズがまだ、俺達のことを信用してくれている証だ。

良かった。

例え『ブルーローズ・ユニオン』のメンバーと一緒にいようと、俺達は、まだ仲間だ。
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