The previous night of the world revolution~P.D.~
「ちっ…。こんなところから入らせるとは…」

エペルは毒づきながら、モノの散乱したガラクタ部屋を見渡した。

文句を言うな。

正面玄関から入ってきてるんじゃないんだぞ。

こんなところからでも、『青薔薇連合会』本部に侵入出来たことを喜べ。

本当は、サナリ派の連中などに入ってきて欲しくはなかったんだがな。

「セルテリシア様にも、このような粗雑な通路を使わせるつもりじゃないだろうな?」

粗雑じゃない、快適な地下通路があるのか?

そんなの知ったことか…。と、言いたいところだったが、

こんなところで喧嘩しても仕方ないからな。

「ルーチェス達が使う通路は、ここよりはマシだよ」

一応、そう言っておいてやった。

確かルーチェス達が使ってるのは、第9地下通路だったよな。

あの通路は少なくとも、レンガの穴を潜り抜ける必要はないよ。

さて、そんなことはどうでも良いな。

「それで、この先のルートは?」 

「ルレイア達とは別のルートで、上に向かう。アイズが何処にいるのかは知らないが…恐らく上だろうからな」

「…そんな適当な案内をするつもりか?」

睨むなよ。

言っとくけどな、俺達はアイズに全く連絡が取れない状況なんだぞ。それはお前達だって分かるだろ。

「今どの部屋にいるんだ?」って尋ねて、返事が帰ってくるとでも?

馬鹿なことを言うもんじゃない。

「確認を取った訳じゃないんだ。何処にいるのかなんて。…だが、この建物にいるのは事実だ」

「…」

「それに、目星はついてる。恐らくは最上階だ」

最上階…つまり、『青薔薇連合会』首領の執務室。
 
アシュトーリアさんの部屋のことだな。

「根拠は?」

「俺達が侵入してきたことに気づいたら、当然狙いはアシュトーリアさんだと踏んで、アシュトーリアさんの護衛の為に最上階に移動するだろう」
 
「…」

納得の行ってない顔だな。

「あるいは、アイズ本人の執務室かもしれない。いずれにしても選択肢はその二つだけだ」

もしかしたらアリューシャの執務室かもしれないけど、それは置いといて。

「その為に、二手に分かれたんだ。ルレイア達がアシュトーリアさんの部屋でアイズを見つけられなかったら、俺達が先回りして仕留める」

「…」

「いずれにしても、上に上がらないことには見つけられない。だからまずは、上の階に向かう。それで良いな?」

「…良いだろう。お前の指示に従ってやる」

それはどうも。

偉そうな態度は気に入らないがな。

「よし、行くぞ。ここを出て…」

ガラクタ部屋の扉を開け、しかし、俺はそれより先には進めなかった。

「…よぉ、会いたかったぜ、おめーら」
 
見覚えのあるライフルの銃口が、真っ直ぐ俺に向かって向けられていたからである。
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